2026. 07. 10 (金)

AIが国境を守る、現場公務員50名が始めた関税行政の大転換

インテリジェンス(AI)が韓国の国境を守り始めた。海外から入ってくる食品や医薬品の成分表を携帯電話で撮影すると、AIが危険性を判定する。従来は5分以上かかっていた作業が約5秒に短縮された。
 
海外からの個人輸入を装った転売や脱税を見つけ出し、複雑な貿易外貨犯罪を追跡するためにもAIが活用されている。
 
この変化の中心にいるのが、イ・ジョンウク関税庁長官である。
 
イ長官が推進するAI政策の特徴は明確である。巨大なAIシステムを外部から導入するだけではない。関税業務を最もよく知る現場公務員が直接問題を見つけ出し、AIを活用して解決策を作る。
 
要するに、『現場から始まる関税行政AX(AIトランスフォーメーション)』である。
 
イ・ジョンウク関税庁長官が先月17日、釜山で開催された麻薬特別検査チーム発足式で挨拶をしている。写真=聯合ニュース
イ・ジョンウク関税庁長官が先月17日、釜山で開催された麻薬特別検査チーム発足式で挨拶をしている。 [写真=聯合ニュース]

 
関税庁は2017年から関税業務の専門性とビッグデータ・AI分析能力を兼ね備えた融合型人材を育成してきた。2026年には全国の税関で50名のAI分析官を選出し、AX推進団を構成した。
 
2026年上半期の『関税庁AXチャレンジ』には現場のAI分析官を中心に22件の事例が出品され、8件が本選に進出した。関税庁は従来の『AI・ビッグデータアワード』を拡大し、今年からAXチャレンジを年2回開催している。
 
AI政府の答えは現場にある
 
AI革命の時代を迎え、政府機関や公共機関の間でAI導入競争が繰り広げられている。しかし、AIシステムを構築したからといって政府が革新されるわけではない。
 
数十億ウォンをかけてAIプラットフォームを作っても、実際の現場で使用しなければ意味がない。逆に、小さなAIプログラムでも公務員の業務時間を短縮し、国民により良いサービスを提供できるなら、それが真のAI革新である。
 
イ長官が注目するのもこの点である。彼は2026年上半期の関税庁AXチャレンジで「AI政府の実現のためには、国民接点にいる現場の税関公務員一人一人が技術を活用して政策と現場行政の執行をつなぐ役割を果たすべきである」と強調した。
 
政府のAI革新は大臣や庁長の指示だけでは実現しない。現場で働く公務員がAIを理解し、自分の業務に適用できる必要がある。イ長官式AI行政の核心はここにある。
 
AI専門家に関税業務を教えるよりも、関税専門家にAIを教える方が早いかもしれない。
 
5分かかっていた業務をAIが5秒で解決した
 
関税庁のAI革新を最もよく示す事例が『写真一枚で止める海外の違法食品・医薬品』モデルである。海外から国内に持ち込まれる食品や医薬品は国民の健康に直結する。税関職員は製品名や成分表などを確認し、危険な食品や医薬品かどうかを判断しなければならない。
従来は確認に5分以上かかっていた。
AIを活用することで状況が変わった。製品名や成分表を携帯電話で撮影すると、AIが情報を分析し、危険な食品・医薬品かどうかをリアルタイムで照会し判定する。5分以上かかっていた業務が約5秒に短縮された。このモデルは光州税関のイ・ビョンソク主務官が開発し、2026年上半期の関税庁AXチャレンジで最優秀賞を受賞した。
 
AI革新は必ずしも巨大なプロジェクトである必要はない。現場で毎日繰り返される不便を見つけ出し、AIで解決すること。小さな革新が数千人の公務員に広がり、数百万人の国民が恩恵を受けるなら、それが政府が推進すべきAI大転換である。
 
AIが貿易外貨犯罪と脱税を見つけ出す
AIの役割は業務時間を短縮するだけではない。ますます知能化する犯罪を見つけ出すためにも活用される。ソウル税関ではAI基盤の貿易外貨犯罪追跡システムを開発した。
 
仁川税関では個人が使用する物品のように海外から個人輸入した後、国内で販売するいわゆる『転売』や脱税をAI住所判読で見つけ出すモデルを作った。過去には税関職員の経験と直感に大きく依存していた。
 
しかし、人が数多くの取引やデータを一つ一つ分析するには限界がある。AIは異なる。膨大なデータを迅速に分析し、人が容易に発見できない異常な兆候やパターンを見つけ出すことができる。
税関公務員の経験とAIのデータ分析能力が結びつき、新しい国境管理システムが作られている。
 
関税庁が『AI人材50名』に注目した理由
 
AI大転換で最も重要なことは何か。多くの人が技術を語る。GPUが必要で、データセンターが必要で、巨大言語モデルが必要だと言う。間違った話ではない。
 
しかし、組織を実際に変えるのは結局人である。関税庁はこの点に注目した。2017年から関税業務専門性とAI・ビッグデータ分析能力を持つ人材を育成してきた。
そして2026年には全国の税関で50名のAI分析官を選出した。
 
彼らは単なるAI専門家ではない。関税行政を理解しながらAIを活用できる融合型人材である。組織革新の観点から重要な意味を持つ。
 
AI時代にはすべての公務員をAI開発者にする必要はない。代わりに、各組織にAIをよく理解する核心人材を育成し、彼らを中心に現場の問題を解決すればよい。50名のAI分析官が100名になり、500名になるなら、関税庁という巨大な政府組織の働き方自体が変わる可能性がある。
 
『上から下へ』ではなく『下から上へ』
 
関税庁AX政策で注目すべき点は革新の方向性である。従来の政府革新はほとんどがトップダウン方式である。本庁で政策を作り、地方組織に指示する。
 
しかし、関税庁のAXチャレンジは異なる。現場で問題を見つけ出し、AIを活用して解決策を作る。優れた事例を発掘し、成果が検証されれば組織全体に広がる。『下から上がるAI革新』である。
 
この方式の利点は明確である。現場公務員が最もよく知る問題を解決するため、実際の業務に適用される可能性が高い。また、自分のアイデアが組織を変えることができるという経験は、公務員の自発的なAI活用を促進する。
 
関税庁は2026年上半期AXチャレンジ以降も優れた事例を継続的に発掘し、国民と共有する計画である。
 
AI時代、関税庁の役割はさらに重要になる
世界経済は急速にデジタル化している。電子商取引や海外からの個人輸入が急増し、グローバル供給網はますます複雑になっている。麻薬や違法物品の密輸方法もますます知能化している。人の力だけで国境を管理する時代は終わりつつある。
 
数多くの物品や取引、企業、人の動きをリアルタイムで分析する必要がある。AIが必要な理由である。関税庁は国民が考えるよりもはるかに多くのデータを持っている。
輸出入データ、企業情報、物流情報、旅行者情報など膨大なデータが関税行政の過程で蓄積される。
 
AIとデータが結びつけば、関税庁は単に税金を徴収し、違法物品を取り締まる機関から脱却できる。グローバル供給網の変化を予測し、企業の輸出を支援し、経済安全保障のリスクを事前に発見する『AI経済安全保障機関』へと発展する可能性がある。
 
イ・ジョンウクの実験が韓国政府を変えることができるか
 
韓国政府には数多くの公務員がいる。彼らが毎日繰り返す業務も数え切れないほど多い。
報告書を作成する。市民の要望を分析する。データを検索する。各種書類を確認する。
 
この中でAIで解決できる業務はどれほどあるだろうか。関税庁の実験は重要な問いを投げかける。政府が巨大なAIシステムを構築することも必要だが、もっと重要なのは公務員一人一人が自分の業務でAIを活用することではないか。
 
関税庁は最近、短期課題と中長期戦略を並行したAX推進の成果を認められ、『AI政府発展有功』大統領賞を受賞した。
 
イ長官のAI政策は華やかなスローガンよりも現場の変化に焦点を当てている。5分かかっていた業務を5秒に短縮し、人が見逃していた犯罪の痕跡をAIが見つけ出し、現場公務員のアイデアを実際の行政に適用する。
 
AI国家大転換は壮大なところから始まるのではない。現場の小さな問題をAIで解決することから始まる。イ長官が率いる関税庁の実験が注目される理由である。
 
韓国政府のAI大転換。
 
その答えは、もしかしたらイ長官が強調するように国民と最も近い現場にあるのかもしれない。




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