2026. 06. 03 (水)

[AI半導体 深読み・緊急連載④] 米中という二つの巨人の狭間で―韓国AI半導体戦略

  • 「勝ち残る国」ではなく「必要とされる国」へ

사진SK하이닉스
[写真=SKハイニックス]

韓国経済の発展を振り返ると、一つの問いが常に存在してきた。「この国は何によって成長するのか」。
 
1960年代の産業化時代には鉄鋼と造船がその答えだった。1980~90年代には自動車と電子産業が成長を支えた。そして2000年代以降は半導体と情報通信産業が韓国経済の中核となった。しかし歴史は、いかなる産業にも永遠の優位を許してこなかった。鉄鋼の時代があり、自動車の時代があったように、半導体もまた新たな文明転換の中で自らの役割を再定義する局面を迎えている。その変化の名が人工知能(AI)である。
 
世界は今、AI革命という巨大な波に直面している。しかし、多くの人々はこの革命をあまりにも単純に捉えている。ChatGPTが登場し、中国のディープシーク(DeepSeek)が注目を集め、新たな大規模言語モデルが発表されるたびに、世界はあたかもそれがAI革命のすべてであるかのように熱狂する。どのモデルが優れているのか。どの国が先行しているのか。誰が先に人間レベルの知能へ到達するのか。そうした議論が繰り返されている。
 
だが産業史は常に同じ教訓を示してきた。目に見える成果よりも、目に見えない基盤の方が重要だということである。
蒸気機関の時代を支えたのは鉄道ではなく石炭だった。自動車の時代を支えたのは自動車メーカーではなく石油供給網だった。インターネット時代の基盤はポータルサイトではなく半導体と通信網だった。
 
AI時代も例外ではない。今日のAI競争の本質はチャットボット競争ではなく計算能力競争であり、その計算能力競争の本質は半導体競争にある。AIは膨大な電力を消費しながら計算を行うシステムである。計算にはプロセッサーが必要であり、その性能を引き出すには高性能メモリーが不可欠となる。そしてAIモデルが巨大化するほど、メモリーの重要性は飛躍的に高まる。現在のAIデータセンターで最も重要な資産がGPUだとすれば、そのGPUの能力を左右するのはHBM(高帯域幅メモリー)である。GPUが頭脳なら、HBMは血管である。どれほど優秀な頭脳でも血管が機能しなければ働けない。同様に、どれほど高性能なAIであってもメモリーなしには存在できない。ここに韓国の戦略的価値がある。
 
世界の視線は米中対立に向けられている。しかし、その競争を可能にしている中核部品を供給しているのは韓国である。米国はAI覇権を維持するために巨額の投資でデータセンターを建設している。中国は米国の規制を乗り越えるため、AIサーバーの増強を急いでいる。米国が攻勢を強めるにもメモリーが必要であり、中国が追い上げるにもメモリーが必要である。米国が勝ってもメモリーは売れる。中国が追いついてもメモリーは売れる。冷戦時代、米ソ対立が激しくなるほど石油消費が増えたように、AI時代には米中競争が激しくなるほどメモリー需要が増大する。そして、その「精製工場」を持つ国が韓国なのである。最近公表された各種指標も、この構図を裏付けている。
 
米国は依然として世界最高水準の研究開発力、資本市場、プラットフォーム生態系を有する。一方、中国は驚異的な速度でその差を縮めている。論文数や特許、産業用ロボットの普及、製造業への応用では既に世界最上位グループに入っている。しかし先端半導体設計やソフトウェア基盤、グローバル資本、市場の信頼という面では依然として米国が優位に立つ。「米国はイノベーションのチャンピオンであり、中国は効率のチャンピオンである」という評価が聞かれるのもそのためだ。
 
ディープシークの登場は、こうした現実を象徴している。一部では「AI版スプートニク・ショック」とも評された。しかし冷静に見れば、中国は急速に追い上げているものの、まだ米国を完全に超えたわけではない。重要なのは現在の勝敗ではない。追い上げる速度である。歴史を動かしてきたのは常に後発走者のスピードだった。日本の製造業も、韓国の半導体もそうだった。そして今、中国のAIがその姿を見せている。だが産業の視点で見るなら、さらに重要な事実がある。
 
米国は中国に勝つために、より多くのGPUとデータセンターを必要とする。中国は米国に追いつくために、より多くのAIサーバーと計算資源を必要とする。どちらの陣営が前進しても、必要となるのはHBMである。これこそがAI時代における韓国の構造的な優位性と言える。しかし、ここで立ち止まることはできない。半導体は出発点にすぎない。本当の変化はこれから始まる。
 
これまでのAIは画面の中に存在していた。人々はAIと会話し、文書を書き、画像を生成してきた。だが次のAIは現実世界へ出てくる。工場を動かし、ロボットを制御し、自動車を運転し、船舶を管理し、物流を統括する。AIが現実の機械と結び付く瞬間、人類は新たな産業革命へと入る。その名が「フィジカルAI」である。
 
多くの専門家は今後10年でAI産業の中心が生成AIからフィジカルAIへ移ると予測する。もしそれが現実となれば、韓国は想像以上に有利な位置に立つことになる。なぜなら韓国は半導体大国であると同時に製造業大国でもあるからだ。自動車、造船、バッテリー、ディスプレー、精密機械、鉄鋼。韓国は製造業とデジタル技術の両方を備えた数少ない国家である。AIが工場を動かし、船舶を設計し、自動車を生産する時代には、製造業国家の価値は再び高まるだろう。ここに韓国の未来がある。
 
韓国は米国モデルでも中国モデルでもない、新しい国家モデルを構築しなければならない。米国がイノベーションのチャンピオンであり、中国が効率のチャンピオンであるならば、韓国は何を目指すべきか。筆者は「信頼のチャンピオン」だと考える。
 
AIは今後、国家運営、産業、金融、医療、教育、行政を支える基盤となる。その時代に求められるのは、単に速いAIでも巨大なAIでもない。信頼できるAIである。韓国は民主主義と法治主義を基盤としながら、世界最高水準の半導体産業と製造業を持つ。米国が容易に供給できないメモリーを提供し、中国が提供しにくい信頼を提供し、そして世界有数の製造業にAIを融合させる。それが韓国の進むべき道ではないか。韓国はこの100年で三つの奇跡を成し遂げた。産業化の奇跡。民主化の奇跡。情報化の奇跡。
 
そして今、第四の奇跡の入り口に立っている。AI半導体の奇跡であり、フィジカルAIの奇跡であり、さらに言えば新たな国家飛躍の可能性である。旧約聖書のダビデはゴリアテより強くはなかった。だが彼は、どこへ石を投げるべきかを知っていた。韓国も同じである。
 
米国の道をそのまま歩む必要はない。中国を模倣する必要もない。韓国自身の道を進めばよい。世界最高水準のメモリー半導体。高度な製造業。民主主義が生み出す信頼。そして危機を機会へ変えてきた国民の底力。この四つこそが、AI時代の韓国を支える最大の戦略資産となる。米中という二つの巨人がAI覇権を争う時代に、韓国は最も大きな国になる必要はない。最も必要とされる国になればよいのである。

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