[オム・テユンのコラム] 北朝鮮の核先制攻撃の脅威と尹政府のプランBは・・・

[写真・執筆=漢陽(ハンヤン)大学国際学大学院グローバルインテリジェンス学科のオム・テユン特任教授]


尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府は8月15日の光復節に「大胆な構想」という対北朝鮮政策を北朝鮮に提案し、「北朝鮮の非核化」を促した。ところが、北朝鮮は9月8日、「核武力法制化」を宣言した。その内容は「北朝鮮の指導部に対する核・非核攻撃が敢行されたか差し迫ったと判断」されるなど5つの状況に符合すれば核を使用するというものだ。韓国国民に向かって核兵器で先制攻撃をするという意味だ。北朝鮮の底意は、韓国政府の非核化論議を一蹴し、核先制攻撃の脅迫を通じて韓米両国に対する圧迫水位を最高潮に引き上げることだ。懸念していた問題が現実となった。北朝鮮は大韓民国国民を核人質にして韓半島で人質劇を繰り広げるという思惑だ。北朝鮮の核は非対称兵器で、韓国の現代化された国防力でも耐え難い。北朝鮮の核を抑制できるのは、米国の強力な「核の傘」政策だ。

文在寅(ムン・ジェイン)前政権が韓半島平和プロセスという対北朝鮮政策を推進し、まるで北朝鮮が非核化に乗り出すかのように国民を欺いたが、その結果が北朝鮮の核攻撃の脅威となった。北朝鮮が韓国を対象に数多くの弾道ミサイルを発射したにもかかわらず、文政権で見ぬふりをして対応した記憶がよみがえる。文政権は「北朝鮮が核兵器を韓国に使用しない」という幻想の中で、ひたすら首脳会談を開催することだけに関心を傾けた。南北首脳会談と米朝首脳会談は、北朝鮮の非核化問題に対して何の成果もなく終わってしまい、北朝鮮の国際的地位だけを高めた格好となった。文政権は「韓半島(朝鮮半道)運転者論」、「仲裁者」という各種修飾語を使い、金正恩(キム・ジョンウン)政権とトランプ政権との架け橋の役割に没頭した。しかし2018年9月の文在寅元大統領の平壌訪問直後、金正恩国務委員長がトランプ元大統領に「直接韓半島非核化問題を議論することを望む」という親書を送り、文元大統領の過度な関心が負担になると指摘した。文政権が「北朝鮮に利用されただけだ」ということが明らかになったのだ。北朝鮮は「通米封南」を目指している。文政権は昨年末、北朝鮮の非核化の代わりに終戦宣言というカードを取り出し、「国連の対北朝鮮制裁解除」に向けて慌ただしく動き、疑問だけを生んだ。北朝鮮の非核化問題も解決されていないのに、終戦宣言という言葉で国際社会や国民からひんしゅくを買った。文政権は任期末まで北朝鮮に低姿勢を取って論議を誘発し、結局南北関係改善の本質である「北朝鮮の非核化」問題を解決できなかった。

文在寅前政権の対北朝鮮政策失敗の結果がそのまま尹錫悦政府に転嫁された。北朝鮮は尹政府の「大胆な構想」提案に「核武力法制化」宣言で冷水を浴びせた。北朝鮮は、南北関係を敵対的関係に導いていく考えだ。韓半島は、北朝鮮の核先制攻撃に対応しなければならない新たな局面に入った。尹政府の対北朝鮮政策プランBが稼動しなければならない。

政府の対応が素早く動いている。韓日米3カ国は北韓の核法制化に対する懸念に共感し、北韓の弾道ミサイル発射を糾弾し、韓米間でも北韓の核抑止力確保に向けて緊密に協議している。9月21日の国連総会で韓日首脳が久しぶりに会い、北朝鮮核問題について話し合った。韓日関係改善に向けた第一歩ということに意味がある。最近、東海で米国の「ロナルド・レーガン」空母が参加した韓米合同海上訓練が行われた。今回の訓練に米国の戦略資産が動員されたのは2017年以後初めてだ。韓半島で危機状況が高まっている中、韓米間できちんとした合同訓練ができて幸いだ。前政権では、韓米合同軍事演習も北朝鮮の顔色をうかがって縮小するなど、非正常的に運営された。今や正常な合同軍事演習に戻っている。韓日米3国の海上合同軍事演習もあった。北朝鮮の核攻撃に対応するためには、韓日米の三角同盟体制 の構築が必要だ。9月29日、米ハリス副大統領が訪韓し非武装地帯(DMZ)を訪問した。彼女は「韓国に対する米国の防衛約束は徹底している」と強調した。いつにも増して韓米同盟関係が堅固だということを示す場面だ。

一方、北朝鮮は9月25日に韓米合同海上演習に反発して弾道ミサイルを発射した後、10月1日の「国軍の日」まで計4回にわたって弾道ミサイルを集中的に発射した。最近強化されている韓米同盟に北朝鮮が不満を抱いて脅威を与えようとする行動と解釈される。韓国と米国は、北朝鮮の武力挑発を国連安保理決議違反だと糾弾した。尹政府は、北朝鮮の挑発にうまく対応している。北朝鮮は、南北関係を破綻に追い込もうとする武力挑発行為を直ちに中止しなければならない。

尹大統領は最近、ニューヨークタイムズとのインタビューで外交・安保政策と関連して文前政権との差別性を強調した。北朝鮮の核問題については「北朝鮮の挑発抑制のために米国の核の傘を含むあらゆる手段を米国とともに用意する準備ができた」と言及した。チップ4参加、韓日米安保協力の必要性とともに中国が主張する3不政策に対しても明確な態度を示した。米中の間で戦略的曖昧性を取った文政府とは異なり、尹政府が明確な立場を堅持しており、国民に安堵感を与えている。

最近のロシアの動きは尋常ではない。予備軍30万人動員令を下し、ウクライナ侵攻事態が長期化する兆しを見せており、プーチン大統領をはじめロシア指導者たちが核使用の可能性について相次いで言及している。ジェイク・サリバン米国家安保補佐官が「ロシアの核脅威」の深刻性を指摘した。軍事専門家たちも今後、中国の台湾侵攻の可能性を提起している。米中間の新冷戦構図の中で、北朝鮮の核挑発の可能性も少なくない。韓半島周辺の雰囲気が騒然としており、北朝鮮の核先制攻撃に対する尹政府の「プランB」づくりが急がれる。1991年の韓半島非核化共同宣言後、米軍は韓国から戦術核を撤収した。しかし、北朝鮮はこの30年間、核開発に没頭しており、今や韓国に向けて核兵器を使用すると脅かしている。国民は、北朝鮮の核先制攻撃を抑制できる確実な対策を望む。北朝鮮の非対称核兵器に対応するためには、核バランスがカギであるため、米軍の戦術核再配置問題をプランBで検討しなければならない。韓半島で北朝鮮の核攻撃の脅威がそれだけ深刻になったためだ。バイデン政権もこの事案の重大性を認知し、対策作りに積極的に乗り出さなければならない。北朝鮮が7回目の核実験まで準備している。G2国家である中国は、北朝鮮の挑発的行動に沈黙せず、国連安保理で北朝鮮糾弾とともに追加制裁に参加し、北朝鮮が核を放棄して正常な国家に進入できるよう、韓半島平和ムードづくりに協力しなければならない。
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