[オム・テユンのコラム] 文政権、基礎体力を強化する経済政策を推進するべき

[写真・執筆=漢陽大学国際学大学院グローバルインテリジェンス学科のオム・テユン特任教授]


昨年12月、中国武漢で始まった新型コロナウィルス感染症(コロナ19)は、韓国と日本に拡散されて市民たちに恐怖心を誘発し、感染者と死者が続出した。米国と欧州地域へ急速に広まっており、全世界を恐怖の中に追い込んだ。世界保健機関(WHO)もパンデミックを宣言し、もはや人類全体の深刻な問題となった。日本と国際オリンピック委員会(IOC)も2020年東京オリンピックの開催を延期することにした。

現在、欧州で多くの死者が発生しており、中国よりも深刻な危機状況だ。3月26日を基準に欧州の累積感染者は28万1000人を記録し、累積死者はおよそ1万6100人に達する。全世界が力を合わせてコロナ19のワクチンを早急に開発し、患者を治療することが急務だ。韓国の国民も、大邱・慶北をはじめとする韓国全域でコロナ19ウイルスを遮断するために死闘を繰り広げている医療スタッフを激励し、心から感謝しなければならない。

一方、世界の経済状況は尋常でない。韓国はもちろん、米国、欧州、日本、中国などで株価が暴落し、外国為替市場も乱高下した。今後の経済見通しもかなり暗い。モルガン・スタンレーは米国の第2四半期の国内総生産(GDP)が30%急減するという衝撃的な見通しをしている。これは、生産と消費が急速に鈍化するからだ。

特にコロナ19事態が長期化され、世界各国で航空業界、観光業界などサービス産業が冷え込んでいる。世界の工場である中国はもちろん、米国や欧州でも工場の稼動が中止されている。世界経済の中心である米国と中国の経済状況が厳しくなり、その影響がグローバル市場に広がっている。世界各国の政府は国家非常事態を宣言し、コロナ19ウイルスの拡散防止に向けて全力を尽くしているものの、世界経済の低迷というもう一つの危機状況に対応しなければならない大きな負担を抱えることになった。

全世界は1930年代の大恐慌、1997年の通貨危機、2008年の世界金融危機を経験したことがある。しかし、今回のようにコロナ19ウイルスが原因で、世界の経済が揺れる状況は初めてだ。米国、欧州など世界各国が経済低迷を憂慮し、緊急処方として金利を引き下げ、莫大な財政を投入して企業再生に死活をかけている。

もちろん、韓国も例外ではない。輸出中心の韓国経済はグローバル経済状況と直結しており、世界経済の低迷の兆しは、直ちに韓国市場に大きな影響を及ぼすことになる。

しかも、これまで政府の誤った経済政策の方向のせいで、韓国経済は厳しい状況だ。政府が企業活動を促進するどころか、むしろ、様々な規制を通じて企業の足を引っ張っている。政府が力を入れてきた不動産政策も、ソウルを含む首都圏の住宅価格上昇という副作用だけをもたらした。大企業はもちろん、中小企業は経済活動への意欲を失った。

その上、コロナ19ウイルスまで韓国全域に拡散し、国民の不安感が極度に達している。すべての経済活動も萎縮し、市場経済はますます悪化している。中小企業と小商工人たちはもちろん、大企業も深刻な流動性危機を経験している。今、政府はコロナ19事態と韓国経済の危機という二つの問題を解決しなければならない。

青瓦台(大統領府)は大統領主宰で「非常経済会議」を開催し、コロナによる倒産を防ぐために100兆ウォンを緊急投入することにした。政府の緊急対策で経済の危機状況が克服されることを期待する。しかし、市場では政府の経済運用に対する不信感を持っている。その理由は、政府が経営の最前線にある企業人の苦情をきちんと反映ぜすに経済政策を進めてきたためだ。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は発足以来、雇用創出という経済政策と北朝鮮の核問題の解決という二つの大きな軸の国政課題を推進してきた。

政府は発足初期に意欲を示したが、各種規制と福祉政策などによって市場経済が活性化されなかった。市場で自営業と中小企業人は実体経済がますます悪くなっていると騒いでいる。今後、韓国経済はさらに困難を経験すると予想される。世界的な格付け会社であるS&Pも「今年の韓国経済がマイナス成長をするだろう」との見通しを出している。

一方、政府は北朝鮮の核問題の解決に向けた能力を外交安保分野に注ぎ込んだ。しかし、北朝鮮の非核化に対する成果はなかった。文在寅大統領は昨年8月5日の青瓦台会議で、「日本の経済がわれわれの経済に比べて優位にあるのは経済規模や内需市場で、南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に追いつくことができる」と述べた。政府が南北経済協力を通じて国内経済不振の問題を一挙に解決できるという漠然とした期待感を持っているように見える。

しかし、最近、北朝鮮が核を放棄する動きは全く見えず、いずれ米朝が衝突する可能性は排除できない状況だ。全世界的にコロナ19ウイルスが広まっているのに、北朝鮮は2020年に入って超大型放射砲と弾道ミサイルを3回も続けて発射しながら脅迫しており、青瓦台に対しても激しく非難した。北朝鮮の核は増え続け、弾道ミサイルの性能も向上されており、国民の安保不安感が高まっている。これが南北関係の現住所だ。

今年5月10日は文在寅政権が発足してから丸3年になる。政府の経済政策と安全保障政策を評価してみると、良い点数をあげるのは難しい。政府は二つの重要な国政懸案をすべて逃す結果をもたらした。

現在、北朝鮮の非核化問題は解決されにくい。国内外の多くの安保専門家たちも北朝鮮の核放棄の可能性について否定的な考えを持っている。政府が政治工学的な側面を考慮し、対北朝鮮協力事業を通じた南北関係の改善に再び力を集中させることは望ましくない。今は、政府が韓国経済の回復問題だけに専念する時期だ。

今からでも政府は経済政策の方向を根本的に転換しなければならない。政府は市場現場の声を聞き、資本主義市場経済の原則を尊重する経済政策を推進するべきだ。

また、昨年の夏、日本の安倍政権の突然の経済報復措置を忘れてはならない。現在、韓国は第4次産業革命の時代に進入している。今も世界各国は近づく未来の経済戦争で主導権を握り、勝利するために苦心している。政府は残りの任期だけでも韓国経済の基礎体力を強化する経済政策の推進に全力を尽くすべきだ。
<亜洲日報の記事等を無断で複製、公衆送信 、翻案、配布することは禁じられています。>
기사 이미지 확대 보기
경북 포항시 경북 포항시
닫기