[カン・ヨンジンのコラム] 見解は違っても礼を尽くした韓米首脳会談

[写真=写真共同取材団 / 筆者=カン・ヨンジン招聘論説委員・言論人]


韓米首脳会談が無事に終わった。何より緊張していたのは、トランプ米大統領の非常に強硬な対北朝鮮圧迫のキャンペーンを繰り広げるのと対照的に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はどうしても北朝鮮との和解雰囲気を作るために努力していることだった。立場の差が大きいため、会談がしらけた雰囲気で行われるのではないかという心配があった。

心配を呼び起こしたのは韓・米政府の対北朝鮮政策の違いだけではない。今、中国と日本は韓国揺さぶりに余念がない。韓・米首脳会談を目前にして、康京和(カン・ギョンファ)外交長官がいわゆる「3不政策」を明らかにした。サードの追加配置の排除、米国のミサイル防衛(MD)体制への不参加、韓・米日軍事同盟拒否が韓国政府の立場であることを強調したのだ。すべて米国が嫌がるしかない内容だ。トランプ米大統領を国賓に招待して、目前で米国の機嫌を損ねる行動をしたのだ。実際、マクマスター米ホワイトハウス国家安保補佐官は康京和長官の3不政策の言及について、"韓国が主権を放棄しない"とし、敏感に反応した。

サード配置のために悪化した韓・中関係を解決するために避けられない苦肉の策だというが、よりによってトランプ米大統領の訪韓に合わせて発表したのは中国の要求によるものとみられる。習近平中国国家主席が「皇帝」となった第19回党大会が、「サード内トラブル(不和)」を解決するのによいタイミングであったのは間違いない。だとしても、韓・米首脳会談を目前に控えて康長官がそうするしかなかったのは微妙だ。中国は韓・米首脳会談を控えて韓国が中国の影響力の下に置かれていることを強調する思惑があったとしか思えない。中国外交部が康長官の3不政策の立場表明を「約束」と主張しただけでも、中国の意図は十分推し量ることができる。中国の過大包装に困惑した韓国政府はあわてて3不政策が「約束」ではなく、「立場表明」と訂正しなければならなかった。

日本も韓国を絶えず牽制している。安倍首相は国際社会で北朝鮮強硬論の先頭走者を自任している。また、トランプ米大統領と最高の相性であることを最大に誇示する。このような対外政策基調に支えられ、総選挙で圧勝したりもした。日本自民党政府の対外政策基調は、米・日同盟を最大限強化して崛起する中国に立ち向かうことだ。米・日同盟をオーストラリア、ニュージーランドを含むアジア版ネイトー(NATO・北大西洋条約機構)に拡大するという構想も先導的に推進している。

この構想の障害が韓国だ。韓・米同盟と米・日同盟が結合して韓・米・日同盟ができればベストなのに、韓国はそんなつもりがない。強い対北朝鮮の圧迫に韓国も積極的に参加することを望んでいるが、文在寅大統領の考えは違う。そのため、日本は韓国をそれとなく「いじめ」する空気を作っている。

しかし、韓国も容易くはない。トランプの歓迎晩餐会に慰安婦出身のイ・ヨンス氏が出席してメニューに独島エビが登場するのはそのためだ。トランプ大統領にとって日本はまだ韓国と同盟を結ぶ資格がないことを強調したのだ。「韓・日・同盟拒否」は日本のアジア版北大西洋条約機構推進構想に水を差した格好だ。

中国と日本の揺さぶりにもかかわらず、韓・米首脳会談は「無事」に終わった。ここには、青瓦台(大統領府)が心配しながらもトランプ大統領を国賓として手厚くもてなした効果が大きかった。世界最大規模、海外米軍基地の平沢キャンプ・ハンフリーズに文在寅大統領が直接迎えに出て、青瓦台の中庭で伝統儀仗兵を行い、子供たちの歓迎団を動員するなど、青瓦台は真心を尽くした。日本の安倍首相のように過恭非礼 (過度な礼節非礼、謙虚さが行き過ぎれば礼儀ではない)という批判を浴びないほどでありながらトランプ大統領を気分よくさせることに成功した。

過去、韓・米首脳会談は雰囲気悪く終わることがなくはなかった。金大中(キム・デジュン)とブッシュ大統領の首脳会談でブッシュが金大中を"This man"と称し、傲慢不遜に呼んだのがよい例だ。それに比べてトランプ大統領は25時間の韓国滞在の間、韓国政府と国民の感情をきめ細かく配慮する姿を見せてくれた。

しかし、雰囲気がよかったのはここまでだ。韓・米両国の政府が対北朝鮮政策、大衆政策、対日政策をかけて根本的に違いがあるということは皆が知っている。したがって、国賓訪問のような席ではない場合、立場の違いが調整されないまま対立が起こる可能性がいくらでもある。

実際にトランプ大統領がソウルから中国へ向かってすぐに文正仁(ムン・ジョンイン)大統領特別補佐官と李鍾奭(イ・ジョンソク)元統一部長官は「3不政策」を積極的に擁護している。3不政策を「屈辱外交」であると批判する世論に対抗したのだ。まもなく開かれる韓・中首脳会談を控えて、文在寅大統領を支援するために乗り出したわけだ。これに支えられ、韓・中首脳会談で文在寅大統領が3不政策を改めて明らかにするならば、韓・米関係が損なわれる危険がある。

首脳会談の和気あいあいな雰囲気とは対照的に韓半島情勢は依然として険悪だ。米国は航空母艦3隻を韓半島付近に集結させ、軍事訓練を行う予定だ。6・25戦争以後初めてのことだ。 国会演説でトランプ大統領が"米国の力と意志を試験するな"と北朝鮮に警告したことが空言ではないことを見せようとしている。

航空母艦3隻が布陣した今すぐではなくても、近いうちに北朝鮮が北東アジア情勢の重要な行為者として存在感を誇示するだろう。太平洋上の水素爆弾実験を何度も予告した北朝鮮が問題を起こすことを心配せざるを得ない。韓半島の緊張は一瞬にして急上昇するだろう。

文在寅大統領は平昌冬季五輪を緊張の悪循環を脱するためのきっかけにするために努力してきた。3不政策が国内外的に論争を触発することを知らなかったはずがない。それにも関わらず3不政策を明らかにした理由は、3ヶ月しか残らない平昌五輪とその後の情勢を考慮した可能性もある。平昌五輪に北朝鮮を参加させて南北和合の雰囲気をエスカレートさせることで韓半島の緊張を緩和する契機にするという構想に、中国が支援してくれることを望んでるのではないだろうか。険悪なムードにになっていく韓半島情勢が良い雰囲気に変われば、核問題にも進展があるだろうと期待したのではないか。その期待が妥当かどうかは長くての2~3ヶ月後以内に判明することになる。政府が2~3ヶ月後、対北朝鮮・対外政策の基調を変えるかも悩まなければならない。
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