[イム・ビョンシクのコラム] 「コロナ感染者」ではなく「コロナ被害者」

[写真・執筆=イム・ビョンシク客員論説委員・元国会副報道官]


数日前、新聞を読んでいたら見慣れた食堂の名前が目に入った。全州にいた時にたまに立ち寄った美味しいお店だった。マスコミは新型コロナウイルス感染症(コロナ19)が私たちの日常をどのように破壊するかについて集中的に照明した。「全州31番」と呼ばれた食堂の経営者金氏が経験した話だ。保健当局は店名と位置、そして金氏の動線を公開した。その時から集団的なイジメが始まった。「死んで当然だ。全州から離れろ」という悪質な書き込みから、一日で100件を超える暴言と非難の電話が殺到した。

金氏は完治され、4月初めに退院した。彼と密接に接触し、隔離された16人も、追加の感染はなかった。記者は「どこから感染されたのか分からないが、誰にも感染させることはなかった。 しかし、非難と呪いは進行形だ」と書いた。この過程で、金氏の人生は完全に壊れてしまった。 この5カ月間、深刻な集団「イジメ」と烙印押し、非難に苦しんだ。ウイルスは克服したが、社会的偏見は克服できなかったのだ。彼は今、睡眠障害や恐慌障害、うつ病にかかっている。

SKグループの役員である後輩は、重要な課題を投げかけた。「誰もが望んで感染したわけではない。だから彼も被害者だ。SKでは『コロナ19被害者』と呼ぶ」。感染者を他者化し、犯罪者扱いするのは不適切だということだ。「感染者という烙印を押した瞬間、2次被害につながる。 このため、感染事実を隠蔽したり検査を回避している」とし、慎重な用語選択を強調した。フレームの転換が必要だという意味だ。

人間にイジメほど苛酷な刑罰はない。刑務所の中でも最大の体罰は独房収監だ。人間は断絶・孤立すれば自ら崩れる。『悪い国ではなく、痛い国だった』(本)にも似た事例が出てくる。村全体が集団で制裁行為をする「村八分」という懲罰だ。これに該当すると、透明人間扱いされる。村落社会で結婚など8つのことで助けを借りることができなければ、自ら破壊される。コロナ19感染者が直面した現実もこれと変わらない。

感染者に対する嫌悪と差別はもう一つのウイルスだ。コロナ19に感染したという理由だけで「付き合うことのできない人」と避難したら、共同体は維持できない。政府とマスコミは常に「ウィズ・コロナ (With Covid-19)」時代を力説する。しかし、現実では感染者への配慮が足りない状況だ。身元を公開して治療すれば終わりという1次的な防疫にとどまっている。スケープゴートを探し、他者化した中世の魔女狩り、ハンセン病患者に接していた当時と何が違うのか。

1月29日、初の感染者発生以後、国家トラウマセンター相談は2万102件(感染者と家族)を越えた。また、自家隔離者と一般人の相談も39万1453件に達する。それだけ精神的な困難に直面した人が多いという傍証だ。ならば、防疫政策にも細心の変化が伴わなければならない。まず、被害者に対する名称だ。感染者と一般人を区別する目的だろうが、「○○番患者」と命名するのが妥当かどうか考えなければならない。一連番号は罪を犯して収監された犯罪者を連想させる。

また本質とは関係のない「TMI(Too much information・多すぎる情報)」も慎重でなければならない。防疫とは関係のない身元情報まで公開することで2次的被害を招くためだ。釜山で教会の修練会に行ってきた若い男女が不倫関係であると間違われたのもTMIが原因だ。感染者の中で婚約関係にあるという身元を公開したのが原因だった。防疫と婚約の事実が何の関係があるというのか。感染を個人の責任に転嫁しようとした無責任な結果だった。

ソウル大学・保健大学院のユ・ミョンスン教授チームが発表した「コロナ19認識調査」の結果によると、感染者が最も恐れる「恐怖心理」は「周りから非難されることと被害が恐ろしい」だった。これは「再び感染する可能性がある」「完治しない可能性がある」という恐怖よりも高い。それだけ、烙印を押されたり集団イジメは深刻だ。ユ教授は「感染責任を個人に転嫁し、加害者-被害者の構図で区別すれば、感染症への対応はもちろん、自発的な検査にも役立たない」と述べた。

新聞で読んだ食堂の金氏は「コロナ感染の事実が知られて売り上げが急減し、今も30%水準に過ぎない」と吐露した。金氏の苦痛は進行中だ。偏見をなくすことが彼の涙をぬぐうことだ。「ウィズ・コロナ」時代、誰もがコロナ19の被害者になる可能性がある。
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