[筆者=キム・サンスン東アジア平和研究院院長、ソウルメディア大学院大学招聘教授、中国 察哈尔学会研究委員]
7月17日、韓国政府の軍事当局会談と赤十字会談(離散家族再会)提案に沈黙で一貫した北朝鮮は、予想通り7月28日午後11時41分頃、慈江道(チャガンド)舞坪里(ムピョンリ)一帯で「火星-14号」2次弾道ミサイルを1発発射した。
韓日米と中国、ロシア間の対立および北中ロ協力を誘導するために、北朝鮮は自ら「戦勝節」と呼ぶ7月27日の休戦記念日と、7月30日に予定された中国の「建軍節」(8月1日)の閲兵式までの間を選択したものとも推測される。トランプの強硬な「中国無責任論」に続いて、韓国のサード発射台「先配置、後評価」の強硬な反応で、北朝鮮の意図された目的はさらに効果を発揮した。
北朝鮮はすでに確定された米国の対ロシア制裁の趨勢と中国初の「建軍節」閲兵式を最適期と判断し、米中露及び韓中関係は北朝鮮の意図どおり冷却された。
◆対北朝鮮政策に対する転換点は実際の行動で実行しなければ
文在寅大統領は北朝鮮の弾道ミサイル発射1時間19分後の29日午前1時、国家安全保障会議(NSC)の全体会議を迅速に開催して強力な武力示威を展開するよう指示した。
国家安全保障会議の措置は三つの重要な意味を持つ。第一に、今後の韓米同盟の「実質的」対北朝鮮軍事抑止力を追求するという点だ。第二に、それ以外にも韓国軍「独自」の対北朝鮮軍事抑止力を追求するという点だ。第三に、国内保守派はもちろん、米共和党(保守派)にも文在寅政府の対北朝鮮抑制力の意志を確認させたという点だ。
筆者は特に文在寅左派政権が見せた三番目の意味が対北朝鮮・対米・国内政治においても新鮮であり、今後も重要だと認識する。今回の措置によって、大韓民国の対北朝鮮政策の転換店が、2017年7月29日の措置から新たに書かれるかもしれないという感じを受けたのは言い過ぎだろうか。
◆文在寅大統領の迅速な対北朝鮮軍事措置と政策転換の意味
筆者はこれについて4つの意味に解釈している。第一に、北朝鮮と周辺国に対する「対外交渉力」を高めたという評価だ。北朝鮮と周辺国に対する対外交渉力を高めるのは「自主国防」と「主権守護」に欠かせない必需要素である。
第二に、「戦略的臨界点」設定の意味がある。つまり、北朝鮮の絶え間ない挑発に対する「臨界点」設定を、これからは行うという意味として筆者は解釈する。北朝鮮の核保有がもたらす韓国の「北朝鮮の核の人質化」を防ぐために、韓国は韓米と協力して北朝鮮と北朝鮮の核問題に対する「臨界点」設定を急がなければならない。
第三に、「防御的・政治的」対応から「攻撃的・軍事的」対応への戦略修正を北朝鮮と周辺国に通知したことだ。つまり、過去の慣例的発言と対応から、今後、実際に実現可能な軍事的措置で圧迫するということだ。
第四に、「対話圧迫」の強力な「実質的・軍事的」行動開始の意味がある。対話誘導の重要なパターンの変化として、「対話提案」の受動的な姿勢から、対話をするしかない「対話圧迫」の能動的で、かつ主導的な姿勢への対北朝鮮政策のパターンの変化を告知したのだ。
整理すると、今回の文在寅大統領の対北朝鮮政策の方向転換は大きな意味を持つ。つまり「政治的対話提案」に力点を置いた政府発足の初期とは違って、「軍事的圧迫」を通じた「対話の要求」あるいは「対話強要」に転換したのだ。そして、この「対話圧迫」は周辺国にも有効である。
◆生存に向けた段階別「戦略的臨界点」設定が重要な時点
北朝鮮に対する「韓米同盟」の「戦略的臨界点」の段階区分とこれに対する具体的な内容は当然、韓米間にも極少数を除いて徹底的に「非公開」に管理されなければならない。また、韓国単独の段階別「戦略的臨界点」の設定と管理もやはり徹底的に「非公開」で管理されなければならない。
筆者の「臨界点」設定必要性について、臨界点は「曖昧性の維持」がより効率的であるという反対の主張がある。しかし、筆者はこの「臨界点」、すなわちレッドライン設定は「韓米連合」と「韓国単独」の区分、そして、これに対する「段階別設定」が必要であることをもう一度強調する。
ここには三つの理由がある。第一に、韓米間に「戦略的臨界点」が「非公開」に用意されて管理されているという事実を北朝鮮と周辺国たちが知っていることが重要な意味を持つからだ。 第二に、これは筆者が昨年から強調し続けている「対外交渉力の向上」のための重要な措置のうちの一つになることができる。第三に、さらに重要な理由は、北朝鮮の核の人質にならないために段階別に選択しなければならない「勇気」が必要な時点であり、これに対するすべての準備を事前に用意しなければならないからだ。
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