去る4月、朝日新聞のある記事が韓国と日本の両国で大きく話題を集めた。日本の大阪府茨木市にある「コリア国際学園(KIS)」は今年、「K-POP・エンターテイメントコース」という正規の教育課程を新設し、4月10日に該当課程に13人の日本人生徒が入学したというニュースだった。
朝日新聞はこの日、入学した学生のカバーダンス・ボーカルステージとインタビューを詳しく伝えながら、自国のK-POPブームの短編を紹介した。その後もコリア国際学園のK-POPコースは韓国の国際報道はもちろん、日本のNHKやABCなどでも数回放送され、注目を集めた。
これまで日本での韓流ブームに慣れていたが、K-POPを正規課程に含めたというのは異例のことだった。こうした雰囲気が日本の教育課程でよくあることか、最近まで日本で学生時代を過ごした後輩にも聞いたが、彼も「不思議だ」という反応だった。日本の学校はもちろん、韓国・朝鮮系列の学校でも入試を受けなければならないので、韓国の中学・高校と似たような雰囲気だとし、今のところはコリア国際学園が唯一だという答えだった。
本紙はオンラインインタビューを通じてコリア国際学園と会ってみた。本紙は約2時間にわたってコリア国際学園の金正泰(キム・ジョンテ)校長先生と藤澤敬先生(韓流エンターテインメント史講師)、現在K-POPコースに在学中の中学3年生の竹中瑞姫さんと高校1年生の加藤 暖琉君から詳しい話を聞くことができた。
◇「コリア国際学園でなければできない」
「(日本でK-POPは)人気があるので同好会(クラブ活動)や個人的にする場合(趣味など)は多いですが、学校での正式課程は初めてです。たまに、高等課程のある専門学校でこれに類するものがありますが、我が校のように大学進学を目標としている中学校や高等学校でこのような教育を並行するのは初めてです。」
金正泰校長は自校のK-POPコースが実際、日本で初めてできた正式な教育課程だということを強調した。ただ、コリア国際学園もK-POPコースを設置するようになったのは偶然だった。昨年10月、金校長が駐日本国大韓民国大使館の梁鎬錫(ヤン・ホソク)首席教育と食事をしながら交わした対話がきっかけだった。
コリア国際学園こそ、日本でK-POPの人材を育てることができると言われたのだ。韓国と日本を超え、世界中に広がるK-POPが韓国や日本のどちらかに偏らず、グローバル人材を育成するコリア国際学園の教育理念ふさわしいという理由からだ。
K-POPアーティストこそ「越境人」という意味だった。「越境人」は、国境と境界を越える世界で通用する人材を育てるという「中立教育」の実験を進めているコリア国際学園の設立理念だ。コリア国際学園は、大阪に住む在日韓国人2世が中心となり、新しい時代の在日韓国人のための新たな教育を確立するという目標のもと、2008年に設立された。
また、韓国と北朝鮮からそれぞれ支援を受ける従来の韓国学校と朝鮮学校ではなく、「新しい民族学校」を設立する試みでもあった。このため、開校過程でどの政府からの財政的な支援も考慮しなかった。日本政府はもちろん、韓国と北朝鮮のどちらかの政府の支援を受ければ、「分断した韓半島(朝鮮半島)の現実」のように、「分断した民族教育」は避けられないという考えからだった。
「20世紀に形成された国家主義的な価値観は、この時代の在日韓国人にはふさわしくありません。多様な(文化的)背景を持つ在日同胞たちはもはや韓国と北朝鮮、日本の国境を越えた存在です。日本の既存学校がこれに追いつきません。私たちは『韓国や北朝鮮だけでなく、日本や海外も、 世界中のすべてが我々のもの』という考えで、堂々とした自分を持って世界で活躍できる学生を育てています。」
コリア国際学園の教育課程も、国を越えるという意味で語学科目を集中的に教育している。韓国語や朝鮮語ではなく「コリア語」と英語、日本語の3カ国語をそれぞれ毎週5時間と7時間、4時間ずつ割いている。
また、在日韓国人のルーツとアイデンティティを忘れないための「在日コリアン史」科目と多文化教育、時事討論などは必須課程の一つだ。在日同胞(全学生の40%)と日本人(30%)、韓国と中国から来た留学生が集まり、少なくとも2ヵ国語から4ヵ国語を使う学校環境を考慮したカリキュラムだ。生徒らの様々な背景による文化的な衝突を防ぎ、バランスの取れた教育を実現するという意味だ。
このような教育の成果で在学生の規模も08年の約27人から約70人に増え、卒業生も70%が日本の大学に、残りは韓国や英語圏の大学に進学するほど、入試成績でも頭角を現している。
金校長はあの時の話が頭から離れられなかったが、K-POP文化についてよく知らないため、下手に仕事を進めることはできなかった。しかし、再び偶然なチャンスがやってきた。東京でK-POP関連プロダクションを経営する高校の同級生から連絡を受けたのだ。同年11月、大阪でK-POPオーディションが行われるので遊びに来てほしいということだった。
金校長は、オーディションはおよそ6時間も続いたと当時のことを思い出した。そして、あの日出会った学生らの姿を見て、K-POPコースを自校に設立することを決めたと振り返った。10~20歳の青少年たちが歌とダンスで自分を表現する姿に、たどたどしい言葉でも一生懸命韓国語を話そうとする姿に深い感銘を受けたという。
金校長はその日、オーディション会場に集まった大阪K-POPダンススクールの関係者らと顔を合わせ、交流協定を進めた。また、現在K-POPコースの運営実務を担当している藤澤先生にも初めて会った。このような準備過程を経て、コリア国際学園は今年1月、初めてK-POPコースに生徒を募集し始めた。当初5人が集まった「スモールスターティング(small starting)」は今年4月に第1学期を開始した当時13人に増え、今秋の第2学期は17人となった。
今年始まったK-POPコースは、コリア国際学園の認知度向上にも貢献した。かつて在学生全体の20%水準だった日本人学生は、わずか1年で10%p(ポイント)も増えており、全体在学生同士の文化交流活動もさらに活発になった。
「とても良い影響だと思います。お互いが文化を理解して学び合い、世界に羽ばたく学生を育てるための様々なアイテムがあります。以前は言語や国際関係を中心に教育していましたが、今私たちが選んだアイテムはまさに『K-POP』です。」
◇「夢見ながらも自分の将来を描くべき・・・アイドルになれなくても幸せをつかむことができるようなカリキュラム」
コリア国際学園のK-POPコースは、商業的な目的の人材育成システムではなく、教育課程の一環であるだけに、金校長と藤澤先生はK-POPコースの在学生それぞれに深い関心を示した。教育者としての責任感だ。インタビューの間、金校長はK-POPコースの在学生らがコリア国際学園に入る前からこれまで努力してきたことをすべて記憶し、一人一人に気を配った。藤澤先生は誰よりもアイドル志望の生徒たちの未来について一緒に悩んでいた。
「私たちは生徒たちが自分の夢を見ながらも自分の将来に対して真剣に受け入れ、ちゃんと勉強できる教育課程を作りたいと思いました。単にK-POPコースで生徒を募集するのではなく、コリア国際学園に入学した後、そして学校を離れた後を見据えて教育するためのカリキュラムを作ってきました。」
経営学研究者の藤澤先生は日本の同志社女子大学で「グローバルエンターテイメント論」やK-POPのメディア戦略などの内容を含む「アジアグローバル戦略」などに出講している。また、コリア国際学園ではK-POPコースの在学生の仕事全般と生活を管理し、それぞれの授業と活動に必要な講師を招くなど、カリキュラム全般を調整する業務も担っている。
特に藤澤先生は、人生のパートナーである同志社女子大学学芸学部メディア創造学科教授の川田隆雄氏と一緒にK-POP産業に関する共同研究活動を行いながら感じたことがK-POPコースカリキュラムに大いに役立ったと説明した。
「過去の研究過程の中で、韓国でアイドル練習生として活動をしてきた日本人と相談しながら、 慣れなかったときの問題点や苦しい思いも本当に多いと感じました。コリア国際学園のK-POPコースを担うことになり、わが校の生徒たちが韓国のK-POP産業界で(厳しさを)乗り越えられるかどうか心配になりました。K-POPを夢見る日本の多くの子どもたちが韓国に行きたがりますが、現地で適応するためにはやることがたくさんあるという事実はよく分かっていないからです。」
そこで藤澤先生はK-POPコースの学生のための「総合的な教育」を準備した。芸能界進出とアイドルデビューだけに集中するのではなく、韓国生活に適応してアイドル活動をすることまで備えた全般的な教育を実施しようと決心したのだ。
「生徒たちがアイドルを夢見るからといって自分が好きなことだけを教えているわけではありません。ダンスや歌の練習だけではなく、作曲をはじめとする音楽の専門知識以外にも業界の常識や大学進学のための勉強をきちんとさせ、どれにも偏らず幅広く教育しようと考えています。」
特に、教育機関としてコリア国際学園が商業的なK-POP人材養成システムと差別化しているのは「学生たちの未来」だった。K-POPコースが生徒らの未来を様々な方向に切り開き、自らの生活を営むことのできる土台になってほしいという気持ちがあるからだ。
「ある韓国の大学でK-POPコースのカリキュラムについて助言を求め、『自分の夢を目指しながらも将来を夢みることができない状況が韓国の学生にとって深刻な問題になっている』という話を聞いたことがあります。アイドルになるというのはすごく大変な道のりで、所属事務所のオーディションに合格することも難しいですが、練習生としてデビューできるかどうかわからないし、デビューしたとしても売れるかどうかも難しいです。自分の将来を見据えて、夢を叶えられなくてもエンターテイメント業界で専門家として活躍できるようK-POPコースがサポートしたいと思います。」
◆この記事は韓国言論振興財団の政府広告手数料の支援を受けて制作されました。
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