
[写真=Gettyimagesbank]
「現在の年俸の5倍水準で5年間保障します。」 最近、中国のディスプレイ業界が韓国の人材を迎え入れるための条件だ。技術人材が現在の年俸基準で25年間働かなければならない所得を5年間で手に入れることができるという話だ。
世界の人材をすべて迎え入れるという中国の計画により、韓国を含む世界各国の人材流出が危険水位を超えた。技術覇権時代に差し掛かっている国際社会で、国内主力産業の根幹すら揺らぎかねないという懸念の声も高い。
最近、「39年サムスンマン」のチャン・ウォンギ元サムスン電子社長(66)が、中国のディスプレイ駆動チップセットメーカー「ESWIN」の副会長(副総経理)にスカウトされたことが確認された。ESWINは2016年に設立された新生会社だ。中国のディスプレイ製造大手「BOE」の創立者、王東升(Dongsheng Wang)氏が会長(総経理)を務めていることから、今後の成長可能性が高いと評価される。王会長はBOEを世界トップディスプレイメーカーに育てた「中国LCDの父」と呼ばれる。
チャン元社長の中国行きは、サムスンの社長級出身者のうち、中国のライバル会社に転職した初の事例であり、半導体・ディスプレイ業界に少なからぬ衝撃を与えた。韓国の中核人材流出の好ましくない先例として残る可能性があるからだ。
中国が世界の人材を積極的にスカウトしているのは最近の話ではない。2008年から2010年にかけ、海外の優秀人材2000人を誘致することを目標とした計画が推進されており、習近平国家主席の指示により、2022年までに1万人の人材を迎え入れる計画へと拡大された。
問題は人材迎え入れを通じて中国が技術を盗むことにある。国内法を巧みに迂回する方式で得た技術力で、中国は人材につぎ込んだ投資金の数十~数百倍に達する付加価値を創出する。
産業研究院が4月に発表した報告書「ディスプレイ産業の労働市場の現況と再跳躍のための人材政策」によると、こうした人材流出などで2012~2017年の間、国家核心技術のうち21件が流出しされた。このうち、ディスプレイ技術は6件(5件が中国)に上る。2018年11月にもディスプレイ装置メーカーが核心技術流出の疑いで起訴され、現在1審公判が進行中であり、所在企業の元・現職職員も今年2月に核心技術流出で有罪判決を受けた。
人材流出を法制度で防ぐには力不足だというのが業界の説明だ。強力な処罰規定を新設することはできるが、現・退職技術人材が国家の主力産業技術を流出しないようにする方策と、産業を育てて技術を保護できるようにするのが優先であると忠告している人もいる。
産業研究院のナム・サンウク新産業室・副研究委員は「ディスプレイなど主力産業の技術人材を海外に奪われないためには、十分に研究できる公共R&Dセンターなどレベルの高い雇用を確保しておかなければならない」と強調した。
政界でもこのような技術人材流出事態を注視する雰囲気だ。
共に民主党のヤン・ヒャンジャ議員は「半導体とディスプレイ技術は、技術覇権国家になる核心的な技術であり、単に技術を盗むことは容易なことではない」としながらも、「ただ、最も簡単な方法は人材を迎え入れることだが、該当人材が持っている技術をすべて取られることになる」と指摘した。
ヤン議員は「理工系への投資が全面的に行われなければならず、技術者が自負心を持って働ける社会雰囲気をつくってこそ、技術覇権時代の勝者になれる」と付け加えた。

[資料=産業研究院提供(ディスプレイ核心技術流出現況)]
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