米朝首脳は、ハノイ会談を壊さず最大限成果を得なければならない理由がある。トランプ大統領はロシアのスキャンダルと弾劾世論を静め、下院を掌握した民主党に対応するために非核化の成果が必要だ。トランプ大統領はハノイ会談の興行のためにツイート政治に熱を上げている。金正恩委員長は、トランプ大統領よりもハノイ会談に死活をかけている。金委員長は核談判をきっかけに国際舞台に華やかにデビューし、トランプ大統領だけでなく習近平主席や文在寅(ムン・ジェイン)大統領と肩を並べながら興行の気質を発揮した。金委員長は非核化を機に体制保障を約束され、経済発展をしようという野心に満ちた計画を持っている。
では、ハノイで両首脳はどのような合意ができるだろうか?会談結果について期待と懐疑、憂慮が交錯する。核凍結と米国の最小限の相応措置を交換するスモールディール(Small Deal)になるという見方がある一方、非核化と体制保障および関係改善を大きく交換するビッグディール(Big Deal)になるだろうという見解もある。
多くの要因を考慮すると、ハノイ会談で快刀乱麻式の一括妥結を期待することは難しい。何よりも実質的な合意を導き出す時間が絶対的に足りない。また、両首脳が大きな枠組みについて合意するトップダウン方式で交渉が進められているため、実務レベルでディテールに対する合意は成立しにくい。さらに非核化の概念と範囲、和平体制転換、関係改善、制裁緩和などの複雑な問題をいろいろ合わせる作業は、一気に妥結する可能性が低い。
こうした点を考えると、ハノイ会談でスモールディールとビッグディールの中間形態であるミディアムディール(Medium Deal)が行われるものと予想される。両首脳はスポットライトを浴び、それぞれ成果を誇る反面、急場しのぎの対策を行い、本格的な課題は後交渉に持ち越す形での妥協策を見出すものと予想される。
まず、核心事項である非核化については、寧辺(ニョンビョン)核施設の廃棄、核実験場およびミサイルエンジン試験場の廃棄・検証などが合意される可能性がある。核物質・施設の届出、廃棄などの問題は、今後課題として残されるだろう。米国の相応措置としては、人道的支援、終戦宣言または不可侵宣言、平和体制転換に向けた多国間協議の構成、連絡事務所の開設などが考えられる。北朝鮮が強く要求する制裁緩和は、米国が簡単に譲歩しようとはしないだろう。
韓国はハノイ会談を注視しながら戦略的な対策を講じなければならない。第一に、ハノイ会談で非核化の最終目標とロードマップが提示されなければならないという点を求めるべきである。非核化の目標とロードマップが明示されてこそ、今後、非核化プロセスが中断されたり後退したりせず、継続して行われることができる。特に非核化の目標は、プルトニウムおよびウラン濃縮施設の廃棄、核兵器の廃棄、運搬手段の廃棄という点を明確にしなければならない。
第二に、終戦宣言または不可侵宣言を通じて米朝間の敵対関係が清算され、平和体制転換に向けた多国間協議が本格化する可能性に備えなければならない。平和体制の転換がもたらす韓半島(朝鮮半島)の安保状況の変化に能動的に対応しつつ、平和プロセスを主導するための方案を講じなければならない。
第三に、ハノイ会談を足場に南北関係を発展させる案を講じなければならない。特にハノイ会談で制裁を迂回する方法で開城工業団地・金剛山観光再開が行われることが最も望ましい。これが思うようにいかなくても、ハノイ会談の成果をもとに開城工業団地・金剛山観光再開に向けた準備作業に取り組むべきである。まずは開城工業団地の企業関係者の施設点検のための訪朝を許可し、金剛山観光再開のための施設点検および個別観光を許可しなければならない。
第四に、ハノイ会談後のソウルでの南北首脳会談について準備しなければならない。ソウル南北首脳会談は、北朝鮮の最高指導者のソウル訪問という象徴的な意味合いとともに、対立と葛藤を治癒する和合の意味、平和・共存を追求する未来志向的な意味合いを持っている。ソウル首脳会談で韓半島の平和と和合、共同発展の青写真を具体化する案に対して知恵を集めなければならない。
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