最近「国家破産の日」という映画が多い観客を集めるという。1997年、韓国が通貨危機に見舞われ、国際通貨基金(IMF)に緊急救済金融を要請し、かろうじて国家不渡りを免れる状況を映画化した。映画の中の多くの部分が事実と違う点が指摘される。韓国の公務員たちが整理解雇を容易にし、勝者独占を追求する新自由主義経済を受け入れるため、暗にIMF行きをあおったという内容が特に議論の対象になる。韓国銀行はこれを防ぐために絶えず努力を傾けたが、結局はIMF行きが決まり、このため韓国経済は急激に新自由主義経済に変わって多くの会社が倒産し、大量の失業者が現れ、金持ちだけが豊かに暮らす不平等な世の中になったという話だ。
映画の興行のためにはかなりアピールする話だが、通貨危機と関連した多くの記録を見ると、事実とはずいぶん違うという。韓国の公務員たちもIMF行きを食い止めるために最後まで努力し、韓国銀行が特に経済主権を守るために闘争した証拠もないという。通貨危機当時、外国メディアで経済記者を務めた筆者の記憶もそうだ。問題はこうしたストーリーが映画ファンに強くアピールする韓国の特殊な状況だ。多分に民族主義的な国民感情のため、外部勢力が韓国に圧力を加えて政策に干渉したことに対して強い拒否感が表われている。IMFが救済金融を提供する条件として、高金利・緊縮財政など厳しい政策を強要し、韓国政府は経済主権を奪われたまま、これを受け入れざるを得なかったという点、そして、それによって大量失業と経済両極化が加速した点がIMFに代表される国際経済体制に対する反感として表れる。
実際、米国と一部欧州諸国がIMFを掌握し、彼らは短期差益を狙って新興諸国を餌に狩る投機ファンドに多くの機会を提供するということは現在の世界経済秩序の大きな問題と指摘されている。IMF総裁はいつも欧州人で、世界経済体制のもう一つの軸である世界銀行(ワールドバンク・WB)のトップは常に米国人という点がこれをよく示している。韓国人が誇りに感じる世界銀行のジム・ヨン・キム総裁も、結局は米国市民であって韓国市民ではない。第2次世界大戦直後、米ニュージャージー州のブレトン・ウッズという小さな都市で決定された現在の世界経済金融秩序は、西側の強大国が定めたゲーム規則によって力のない弱小国が盲目的に追いかける不平等な構造だ。
そのため、通貨危機直後、韓国民にとってIMFは恐ろしい死神であり、無慈悲な暴君だった。 映画でIMFのある官吏が傲慢に韓国の官吏に君臨する場面は、このような情緒を反映している。その当時IMFは、「I Am Fired」(私は解雇された)あるいは「I Am Fucked」(私は潰れた)という自嘲混じりの隠語として表現された。IMFメニューが流行し、建物のエレベーターには「IMF」という表示をつけて電気を節約し、階段を使うように誘導したりもした。
もちろん、IMFおよび西側主導の世界経済体制に対するこのような拒否感は根拠があるが、問題は韓国のように小さくて開放された経済が、このような体制を拒否できないという点だ。 当時、アジア通貨危機の際、マレーシアのような国はIMFの支援を断り、自力で危機を乗り切った。資源が豊かで貿易依存度が低い国だからこそ可能だった。しかし、韓国の場合は違った。資源も不足し、貿易依存度が世界最高水準と高い状態で、IMFを拒否したら一瞬にして国家全体が破産し、私たちの暮らしは今よりさらに厳しくなったはずだ。韓国がずいぶん前から輸出主導の成長を遂げてきたし、韓国企業が世界市場を目指したため、いやでも世界経済の秩序を追いかけていかなければならないのだ。
重要なのは世界経済の不公正さにもかかわらず、いかにしてこの体制をうまく利用して韓国の目標を達成すべきかということだ。実際1997年から1998年にかけて通貨危機に見舞われたため、韓国経済は2007年から2008年、ウォール街から始まり世界中で激しい経済危機に見舞われたとき、比較的容易にこれを勝ち抜いたことがある。当時、政府高官は10年前に使用したマニュアルに従って経済政策を執行し、このため試行錯誤を減らすことができた。また、IMFの注文どおり企業も負債を減らして体質改善をしたため、より容易に危機克服ができるようになった。
もう一つ、IMF通貨危機の時に韓国が学んだことがある。当時、韓国経済と企業には多くの問題点があったが、さらに問題になったのは韓国に対する国際社会の信頼度だった。外為など金融情報開放を拒否し、状況について率直な説明を怠ったのだ。外部を常に疑いの目で眺め、そのため秘密主義が広がっていた。このため国際社会では韓国を「信頼できない国家」と見ており、結局「信頼性の危機」が到来したのだ。外国資金は一瞬にして流れ、株は暴落し為替相場は暴騰した。
20年が過ぎた今、もちろん韓国は大きく変わった。これ以上重要な金融・経済情報を隠したり騙したりしない。国際社会の信頼を得るために継続的な努力をする。経済官僚らは政策が変わるたびに迅速に外国人投資家にこれを知らせて理解を求める。企業も同様だ。情報を迅速に公示し、投資家の関係に心血を注ぐ。しかし、まだ変わっていないことがある。国民が外国や外部に対して見せる民族主義的な拒否感だ。票を意識する政治家がよくここに便乗する。最近問題になった映画が成功する理由もここにある。しかし、明らかなことがある。IMFが我々に苦痛を与えたが、我々を救ったのも事実だ。
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