2026. 02. 16 (月)

[アジア インサイト①|真理・正義・自由] バングラデシュ政権交代とアジアの未来

  • 西洋の鏡を離れ、私たちの視線で

アジアは、もはや世界の周縁ではない。

人口の重みも、生産の躍動も、技術革新の速度も、文化の広がりも、すでに東へと軸足を移している。世界の物流はアジアの港湾を抜け、デジタル経済と文化産業はアジアの都市で息づいている。
 

それでもなお、政治を語る言葉だけが、西洋の尺度に縛られてはいないだろうか。民主主義はどれほど成熟したか、市場経済はどれほど成功したか――その評価軸は、いまもなお西洋との距離で測られがちである。
 

だが、問いは変えられるはずだ。私たちは西洋の鏡の中で自分を確かめ続けなければならないのか。それとも、自らの歴史と経験のなかから未来を構想すべきなのか。
 

本稿は、新連載「アジア・インサイト」の第一回である。アジアを説明する言葉を、アジア自身の内側から紡ぎ直す試みである。その最初の考察対象が、バングラデシュの政権交代だ。
 

1971年の独立以降、バングラデシュは軍事クーデター、権威主義体制、家族政治、街頭政治が交錯する歴史を歩んできた。民主主義は何度も揺らぎ、選挙は対立と分断を伴った。アワミ連盟とバングラデシュ民族主義党という二大勢力の競合は、単なる政党間争いではなく、国家の進路をめぐる深層的な葛藤でもあった。

 

방글라데시 신문 1면을 차지한 라흐만 방글라데시민족주의당BNP 총재 대행 사진연합뉴스
バングラデシュで発行された新聞の1面記事。[聯合ニュース]


2026年総選挙は、その長い軌跡のなかで一つの転換点となった。民族主義党主導の連合は組織力と広範な選挙運動によって支持を広げ、過半数を確保した。投票と開票は国際監視団と国内当局のもとで比較的平穏に行われ、大規模な混乱は生じなかった。
 

重要なのは、権力が銃ではなく投票によって移動したという事実である。
 

17年の亡命生活を経て帰国したタリク・ラフマンが次期首相として浮上する過程は、軍部や非常統治ではなく、憲政の手続きが尊重されたという点で象徴的だった。選挙後も大きな衝突は回避され、新指導部は制度の安定と国家の正常化を掲げた。
 

しかし、選挙の結果そのものよりも重要なのは、その後である。民主主義は投票によって始まるが、投票だけで完成するわけではない。司法の独立、言論の自由、野党の存在を認める寛容、行政の透明性。そうした制度と文化が重なり合ってはじめて、民主主義は根を下ろす。
 

アジアはいま、米中戦略競争、保護主義の広がり、エネルギー不安、技術覇権という複層的な国際環境に置かれている。バングラデシュもまた、特定大国への依存を避けつつ外交と経済の多角化を模索している。それは一国の選択というよりも、アジア諸国が共有する課題である。
 

強国の競争の舞台となるのか。それとも、自律的な主体となるのか。この問いに対して、韓国の経験は一つの示唆を与える。
韓国もまた植民地と戦争の記憶を抱え、権威主義を経て、市民の力で民主化を成し遂げた。同時に輸出主導型の成長、教育投資、技術革新によって経済的飛躍を遂げた。
 

その歩みは、単なる経済指標の上昇ではない。権力への監視、法治の確立、選挙による政権交代、そしてルールに基づく市場経済が重なり合った結果であった。民主主義は固定された到達点ではなく、不断の修正と更新の過程であることを、韓国は経験してきた。
 

今日、多くのバングラデシュ人労働者が韓国の現場で働いている。そこでは契約の信頼、安全規範、生産管理、デジタル行政といった制度の具体的な運用が日常として存在する。それは単なる労働移動ではなく、制度の体験であり、学習である。
 

「K民主主義」「Kエコノミー」「Kカルチャー」という言葉があるならば、それは優越の誇示ではなく、経験の共有であるべきだろう。ろうそくと投票、輸出と革新、文化と創造性が重なった歴史の蓄積である。
 

アジアは、植民地支配、軍政、一党体制といった時代を経ながら、政治的成熟を模索してきた。その歩みは決して一直線ではなかった。後退も混乱もあった。それでも市民意識は蓄積される。教育と情報の拡大は、権力の独占を難しくする。市場経済は透明性と予測可能性を求める。それは制度改革への圧力となる。
 

アジア的視座とは、西洋を拒絶することではない。自由と市場を、それぞれの歴史と文化のなかで根づかせようとする試みである。
 

バングラデシュの政権交代は、その可能性と限界の両方を映している。
権力が市民から生まれ、法が権力を拘束し、市場が公正なルールのもとで機能するとき、繁栄は持続する。それは特定の文明の専有物ではない。
 

真理、正義、自由。
それは人類の普遍的価値であり、アジアもまたその担い手である。
 

アジアは周縁ではない。自らの眼差しで自らを見つめ、自らの言葉で世界を語るとき、はじめて中心となる。バングラデシュの選択は、その長い歩みの一頁である。そして「アジア・インサイト」は、その歩みを記録するための最初の問いである。


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