[ムン・ヒョンナムのコラム] これからは「ブルーエコノミー」時代

[写真・執筆= ムン・ヒョンナム淑明(スクミョン)女子大学経営専門
大学院教授]

未来に最も有望な技術と産業は何だろうか。多くの人がよくする質問だ。36年前、筆者の最初の職業は経済研究所で経済・産業・企業を分析するアナリストだった。その時からマスコミ界を経て学界に長く携わり、引き続きこの質問に答えを探そうと努力している。長い研究と悩んだ末、私たちの未来に最も有望な技術は「ブルーテクノロジー(Blue Technology)」だと結論付けた。

自然からインスピレーションを得たり自然を模倣した技術を全て合わせるのがまさに青色技術であり、これを産業および経済分野全般に適用したのがまさに「ブルーエコノミー(Blue Economy)」だ。ブルーテクノロジーについて聞いたことがあるものの、詳しく分からない人が多いだろう。筆者は最近、今後10年間有望な10大有望技術、5大有望技術を発表したが、まず気候テック(気候技術)を挙げた。気候テックが代表的で具体的なブルーテクノロジーの一つといえる。

2008年10月、スペインで開かれた世界自然保全連盟(IUCN)会議で、グンター・パウリ(Gunter Pauli)氏はジャニン・ベニュス(Janine Benyus)氏とともに「自然の100大革新技術(Nature's 100 Best)」という報告書を発表した。同報告書は、生物からインスピレーションを得たり、生物を模倣した技術2100の中で最も注目に値する100の革新技術を選定して収録したものだ。

グンター・パウリ氏は著述家と起業家として世界最大の環境企業エコベール(Ecover)の設立者であり、ローマクラブ会員である。1994年にジェリー(ZERI:Zero Emissions Research and Initiatives)財団を設立した。彼は持続可能性に関する研究、民間教育、ビジョンの提示に多大な貢献をしている。パウリ氏は世界の数多くの地域で持続可能な方法で健康な環境と栄養増進、健康増進、雇用創出のためにプロジェクトを実行し教育することに自身を捧げている。

パウリ氏は2010年6月、自然の100大革新技術を経済的な側面から観察した著書「ブルーエコノミー(Blue Economy)」を出版した。この本の副題は「10年内に、100種類の革新技術で、1億個の働き口が生まれる(10years、100innovations、100millionjobs)」だ。韓国でも2010年6月15日に『ブルーエコノミー』(低炭素グリーン成長の未来-10年以内に、100の革新技術で1億の雇用が創出される)と翻訳出版されたが、それほど注目されなかった。

パウリ氏はこの本で、100種類の生物模倣または生物霊感技術で2020年までの10年間、1億個のブルー雇用が創出される事例の下絵を提示し、ブルーエコノミーに対する期待を次のように表明した。「グリーン経済は環境を保存すると同時に同じ水準だったり、さらには少ない利益を達成するために企業にはより多くの投資を、消費者にはより多くの支出を要求してきた。

多くの善意と努力にもかかわらず、グリーン経済は大きな要求を受けてきた実行可能性を達成できなかった。もし私たちが目線を変えれば、ブルーエコノミーが単純に環境を保存する次元を越えて持続可能性の争点を提起していることに気づくだろう。ブルーエコノミーは何よりも再生を約束する。生態系が進化経路を維持し、すべてが自然の絶え間ない創造性、適応力、豊かさからの恩恵を享受できるよう保障しようとするものだと言える。

パウリ氏は本書で、ブルーエコノミーが雇用創出の側面でも非常に印象的な規模の潜在力を持っていることを示した。このような脈絡で自然を模した革新技術を「ブルーテクノロジー(blue technology)」という名前で呼ぶことを2012年に出版した<自然は偉大な師匠だ>で提案している。

韓国の国内でブルーテクノロジーの研究を先駆的に主導しているESG青色技術フォーラムのイ・インシク代表は「自然を師匠とし、このような自然の秘密を明らかにして『経済的効率性に優れながらも自然親和的な物質を創造しようとする融合技術』をブルーテクノロジー(blue technology)という」と青色技術を説明する。ESGブルーテクノロジーフォーラムは9月20日に「世界気候テック、気候産業の展望」というテーマでラウンドテーブルを開催することにした。

ブルーテクノロジーは研究者によって気候技術、バイオ技術、海洋技術、環境技術など色々な分野に関心分野が分かれることもある。しかし、このような技術は互いに融合して青色経済に統合発展するとみられる。米国のMITは2022年1月に「MIT Technology Review」を通じて海洋技術観点の「青色技術指数(The Blue Technology Barometer)」順位と点数を発表した。66の海洋国家を対象にした同評価によると、世界青色技術の順位は1位が英国、2位がドイツ、3位がデンマーク、4位が米国、5位がフィンランド、6位がノルウェー、7位がフランス、8位がスウェーデン、9位が韓国、10位がカナダ、11位は日本の順だ。

ブルーテクノロジーは最近、国際的な関心事として浮上している。2022年10月25日、釜山で開かれた第16回世界海洋フォーラムで、国連ハビタット主導の下、釜山沖に世界初の海上都市を建設するOCEANIX(オセアニックス)の代表は基調講演で「海上都市はブルーテクノロジーで建設する」と明らかにした。10月28日のG20研究革新閣僚会議では「ブルーエコノミーのための新技術開発」に合意した。

ブルーテクノロジーとブルーエコノミーが世界的な新しいゲームチェンジャーに浮上する理由は大きく2つだ。第一に、ブルーテクノロジーはESG産業生態系を実現する気候テックである。ブルーテクノロジーは何よりもグリーンテクノロジーの限界を補完する可能性が高い。グリーンテクノロジーは環境汚染が発生した後の事後処理的対応の側面が強い反面、ブルーテクノロジーは気候変化物質の発生を事前に源泉的に抑制しようとする技術であるためだ。米国のプロジェクト・ドローダウン(Project Drawdown)が発表した炭素中立100大技術のうち、上位25の60%にあたる15が生物模倣、すなわちブルーテクノロジーであることが明らかになった。

第二に、ブルーテクノロジーは新産業と雇用創出の効果的な手段になる可能性が高い。ブルーエコノミーを創案したグンター・パウリ氏は2015年10月に出した<ブルーテクノロジーバージョン2.0>で「40億ドルを投資した200ヶブルーエコノミープロジェクトで300万ヶの働き口が創出された」と報告した。KBS 2 TVは2017年7月12日に放送された「グローバル経済」で世界ブルーエコノミー市場の規模が「2015年の43億ドルから15年後の2030年には1兆6000億ドルに奇跡的な成長をする」と報道した。

2019年10月30日、ブルーテクノロジーの研究基盤を造成し体系的な支援を可能にした「ブルーテクノロジー技術開発促進法案」が発議されたが、立法がなされなかった。同法案は再び発議され,速やかに立法されなければならない。もう一つは韓国で毎年世界気候テック、環境生態技術などブルーテクノロジーと産業専門家が参加する「世界ブルーテクノロジーフォーラム」を新設して国際行事を開催すれば世界経済を議論する世界経済フォーラムのように世界炭素中立政策と世界経済を主導できるだろう。

韓国政府の主要政策責任者たちの関心と認識は、まだグリーン技術に留まっている。一日も早く認識水準を高め、ブルーテクノロジーに対する投資と支援に集中しなければならない。米国・欧州・日本など科学技術先進国はブルーテクノロジーを未来有望技術分野に選定し積極的に支援している。しかし、韓国はブルーテクノロジーに対する体系的な支援が足りない。最高の有望技術であるブルーテクノロジーに投資すれば、世界経済の先導が可能だ。ブルーテクノロジーとブルーエコノミーで巨大な新市場と雇用創出が可能であることを大統領と高位政策責任者たちが一日も早く認識して適用することを期待する。
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