[イ・ハクノのコラム]政権交代の費用、「最小限に減らす」方法

[写真・執筆=イ・ハクノ東国(トングク)大学国際通商学校教授]


半月後には尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府が5年の任期を始める。政権交代後に発足する歴代政府に送った成功の祈願のように、韓国国民の大多数は今回も新しく発足する政府の成功を望んでいる。選挙過程で支持しなかった人々も、次の政権交代のための政治的動機でなければ、新政権の失敗を望む理由はあまりないだろう。政府の失敗は、大統領や政権与党または政策担当者の失敗を越え、韓国の失敗であり、その負担はそのまま韓国国民が負わなければならないからだ。

政権交代によって、人と政策の交代など多くの変化が生じ、費用も発生する。選挙後2ヵ月間、公約を中心に政策課題を整理したというが、完璧ではなく、推進過程で試行錯誤するものだ。今回だけでなく、繰り返される政権交代の過程でなるべく費用を減らし、構造的な問題を解決するためにシステムを改革する必要がある。第一に、政府政策の一貫性を維持しなければならない。経済政策の時間一貫性(timeconsistency)問題は、2004年にノーベル賞を受賞したエドワード・プレスコット(E.Prescott)やフィン・キドランド(F.Kydland)教授らが発表したもので、右往左往するインフレ政策が代表的な事例だ。すなわち、インフレ抑制政策を展開していた政府がインフレがある程度抑制されれば、インフレ抑制の代わりに経済成長のための通貨拡大(金融緩和)政策に転換し、再びインフレが懸念される状況になれば、インフレ対策に転じるなど、温湯と冷湯政策で国の混乱と費用は増すということだ。投資拡大のために税金を減免して投資が積もれば、投資に対して高い税金を課す政策も一貫性を失った政策事例として挙げられる。

政府の政策が頻繁に変更されると、2つの費用が発生する。 第1の費用は効率性の喪失である。頻繁に変わった政策はぼろ(政策ゲリマンダリング)となり、資源配分の効率性を失うことになる。流れる小川のあちこちに石を置いておくと流速が遅くなり、曲がりごとに地面が掘られる。第2の費用は信頼喪失の費用である。国民はいわゆる「羊飼いの少年」効果によって政府政策を信頼しなくなり、政策が変わる日を待つ忍耐の戦い(war of waiting)に入るなど防御的な対応をすることで、政府政策は期待する効果を出しにくい。「政府は政策を作るが、国民は対策を作る」という話は政策無力化に対する冷笑的な教訓だ。

状況変化による時間一貫性喪失も問題だが、政権交代も人為的な政策転換費用を発生させる。政権交代による政策変化は当然だが、政策変化の方向と大きさが問題だ。埋没費用の大きいエネルギー政策の転換などは慎重に推進する必要がある。例えば、再生エネルギーと原発比重などの調整が必要だが、国際的な流れと効率性と信頼喪失の費用などを考慮して結論を下さなければならず、第一歩を踏み出した水素エネルギーも未来を見据えて推進する必要がある。

第二に、国民全体を見据えて政策を推進しなければならない。今回の政権交代の過程で、支持層と反対層が51対49と克明に分かれた。政権交代に賛成した人々は、前政権に対する不満で政策の大転換を支持している。一方、支持しなかった人々は、新政権の過ちを浮き彫りにし蓄積することで、次の政権交代のための動力にしようとしている。支持と反対がぶつかり続ければ、国の発展の方向性は揺れ、国力は弱まる。そうしているうちに政権後半には「うちのうさぎ」でも守ろうと「わが政治」をするようになる。相手の過ちを乗り越えて立ち上がった政権が、いつの間にかデジャビュのように前政権の二の舞を演じることになる。このような問題を予防するためには、政権発足初期に反対陣営も参加する「国家発展大会」を開催し、中長期的な国家発展のマスタープランと共有価値を確立して大統合の政治を実現しなければならない。

第三に、国のシステムを直さなければならない。環境部など一部省庁のブラックリスト事件が問題となっている。ブラックリスト事件は政権を選ばずに発生してきた。前任政権で任命して新政権と哲学が違うと推定される人は変えなければならないというのがブラックリスト事件だ。産業部のブラックリスト問題は、陸海空の様々な方面で仕事が多く、ナツメの木に凧が引っかかる省庁が経験する苦難だ。突っ込めば、いくつかの省庁だけの問題ではない可能性が高い。それなら、これは担当した人々の問題ではなく、構造的な問題かもしれない。公共機関の役員の任期を2~3年と決めず、政権交代とともに交代できるよう規定を見直すか、あるいは政治とは関係のない有能な専門家を公募してきちんと選ぶシステムを整えなければならない。公共機関の人事だけではない。各種評価制度、入試及び入社制度の中で理想は良いが、客観化できないなど評価者によって左右される部分は果敢に見直さなければならない。

韓国国民の分け前もある。政権発足前に失敗を予断してはならない。我々と彼らの陣営と集団は分けることもできず、彼らだけを責めることはできない。かつてある大手企業の会長が「行政は三流、政治は四流、企業は二流」と発言して話題になった。納得できる面もあるが、果たしてそうだろうか。行政をする人も政治をする人も企業家も皆同窓会に会う私たちの友人であり、隣人たちだ。共同体社会で私たちはみんな「同級」ではないだろうか。

新しい政権が結局失敗すれば、韓国が失敗するわけだ。この国と韓国の未来と子孫を考えて賛成することは賛成し、反対する声を慎む必要がある。支持層も盲目的な支持よりは反対意見を包容する大統合の雅量を示さなければならない。
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