イスラエルのIT(情報技術)ベンチャー企業「XTR」が、画面に触れずに身ぶり手ぶりでゲームソフトなどを操作する「モーションコントロール」の新技術を開発した。パソコンに接続する市販のウェブカメラで細かい動きをモニター画面に反映させられるのが特徴で、来年4~6月にもゲーム機などへの搭載を目指す。モーションコントロールは任天堂の家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」で知られるようになったが、今後は家電や医療機器など幅広い分野で利用が見込まれ、成長市場の取り込みを目指して技術開発の動きも加速している。
◆動きでコントロール
XTRは、イスラエルのテルアビブで2005年に設立されたベンチャー。同社のモーションコントロール技術は、ウェブカメラで人間の動きを把握するソフトウエアが特徴。カメラで撮影した人間の動きを3D(3次元)技術で捕捉すると同時に、奥行きについても分析し、利用者の動きを正確に把握して画面上に反映させる仕組みだ。
これらの処理をソフトで行うため、専用のコントローラーやカメラも不要で、精度も1ミリ単位の誤差しかないという。ソフトを電子機器にダウンロードするだけでモーションコントロールを利用できるのも売りだ。
XTRのドー・ギボン最高経営責任者(CEO)は「専用の機器を使わないのでコストがかからない。他の技術と比べた際の優位性は明らかだ」と強調。XTRではゲーム機器のほか、テレビなど家電メーカーにもソフト搭載を働きかけている。
モーションコントロールは、任天堂が2006年に発売したWiiに搭載されたことで認知度を得た。ゲーム機の常識だったボタン操作ではなく、身体の動きで操作する新しさが高齢者や女性らにも訴求し、全世界で約7400万台(6月末時点)を販売するヒット商品となった。
◆専用の機器不要
他のゲーム機メーカーも追随している。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、モーションコントローラー「Move(ムーブ)」を今月15日に欧州で発売する。先端部が光を発する手持ち型のコントローラーと、その動きを読み取る専用カメラなどで構成。カメラがコントローラーの放つ光を感知して利用者の動きを正確に把握することで、Wiiよりも正確性を高めたという。
米マイクロソフトも、コントローラーを使わずに身ぶりや声でゲームを操作する「Kinect(キネクト)」を北米で11月4日に発売する。専用カメラとセンサーを組み合わせ、利用者の動きだけでなく声も検知して画面内の登場人物の動きなどに反映させる。専用のコントローラーは不要だ。
ゲーム機以外でも応用が始まった。日立ソフトウェアエンジニアリングは島根県産業技術センター(松江市)と共同で、同技術を使って水族館で来場者に飼育員の仕事を疑似体験してもらうなどのサービスを開発し、今月から本格展開する。日立ソフトでは「産業や医療などでも使用が見込める」(幹部)として、用途を開発中だ。半導体大手のルネサスエレクトロニクスも、テレビに市販のウェブカメラを装着して手ぶりなどで操作する技術を開発した。
XTRのギボンCEOはモーションコントロールについて「自然な操作感はわれわれを取り巻く多くの機器に広がっていく」と期待する。野村総合研究所の中林優介コンサルタントは「ゲーム以外ではまだ未知の分野だが、操作の正確性などが向上すればセキュリティー機器を遠隔操作するなど産業分野でも利用が広がる可能性はある」と指摘する。
米アップルの多機能情報端末「iPad(アイパッド)」がタッチパネルによって情報機器への入力方法を変えたように、モーションコントロールが電子機器を大きく変化させる可能性もありそうだ。
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