[シン・セドンのコラム] 歴代5番目の経済寒波を乗り越えるためには

[写真・執筆= 淑明(スンミョン)女子大学の申世敦(シン・セドン)教授]

厳しい1年を過ごしたものの、2023年ほどではないだろう。来年の経済成長率を韓国銀行やKDIのように1%台に提示したことは、この30年間一度もなかった。経済成長率1%だけでも過去にはなかった不景気といえる。1960年以降62年間、経済成長率が2%に及ばなかったことは4回しかなかった。1997年IMF危機の時(-5.1%)や1980年の石油危機当時(-1.6%)、2020年コロナショック(-0.7%)、そして2009年金融危機直後(-0.8%)がそれだ。もし2023年の経済成長率が1%になれば、それだけでも60年のうち5番目に厳しい経済になるわけだ。各研究機関が来年の経済成長率を1%台と見通す理由は、対外的に輸出が低迷しているためだ。また内需不振が重なると予想しいるからだ。コロナショックや原材料価格の急騰、ウクライナ戦争と国際高金利が重なって発生し、これまでにない輸出不景気に見舞われることは確実だ。その上で金利引き上げで投資と消費が大きく萎縮するとみられる。

問題は経済成長率という統計では捉えられないより大きなリスクが潜んでいることだ。第一に、インフレによる実質所得の減少だ。物価が上がれば、そのまま国民の実質所得が減る。今年のインフレが5%だとすれば、賃金所得1500兆の5%である75兆ウォンが霧のように消える。来年4%近いインフレが避けられないなら、それだけで約60兆ウォンがさらに削られるわけだ。第二に、金利負担が急激に増えた。市場貸出金利が2%程度上がったと見れば、家計貸出金利負担だけで約40兆ウォンが増加する。企業貸出金利の負担まで合わせれば100兆ウォン近くになるだろう。韓国銀行が来年も金利をさらに引き上げることになるとみられ、国民の苦痛は一層大きくなると予想される。インフレと金利高の負担のほか、国民は深刻な財産損失を経験した。2022年9月までに642兆ウォンの時価総額が消えた。また、今年中に住宅資産価値も約327兆ウォン減少した。株式価値の下落と住宅価格の下落にともなう資産価値の喪失を合わせれば、今年中だけで約1000兆ウォンが消滅したのだ。経済成長率には含まれないこの4つの損失、すなわちインフレ損失、金利負担の損失、株価下落の損失および住宅価格損失の合計金額はGDPの50%を超える。経済の半分を超える資産損失を2022年に体験した国民は必然的に消費を減らすだろう。必ずしも購入しなくてもいい耐久財の消費や会食を減らすだけでなく、生活必需品の消費さえも消費量を減らし、低価格製品に転換しながら支出金額を縮小させていくだろう。最終民間消費の場合、名目増加率は1%~2%に鈍化し、実質増加率はマイナスになる可能性が高い。簡単に言えば、一般飲食店の売上はほぼ1%増に止まり、販売量はむしろ2%程度減少する不景気になるということだ。

消費が低迷すれば、真っ先に消費に依存して生計を立てる自営業者に打撃を与えることになる。飲食業やコンビニ業、個人サービス業、文化芸術業などを営む約650万人の自営業者は営業実績が不振になり深刻な生計威嚇を経験するだろう。また、これら自営業者によって一時的に提供される600万人の臨時日雇いが大きく萎縮するだろう。経済が低迷すれば、700万の中小企業も共に厳しくなる。生産する製品の販売量が減少する中、より安価な国外輸入品が増え、深刻な経営危機に追い込まれる可能性が非常に高い。特にコロナ危機以後、この3年間増えた借金と金利引き上げ負担に耐え難い中小企業が急増するだろう。650万の自営業者と700万の中小企業、そして共に難しくなる600万人の臨時日雇いを合わせれば、約1950万人の中産庶民層の生計が大きく脅かされる一年になるとみられる。

全体人口の半分に近い2千万人が近づく消費および景気低迷に直面することになると仮定すれば、政府の経済政策方向は何よりも緊急救済に重点を置かなければならない。特に最下位所得階層とその家族に対する民生支援を強化しなければならない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府発足直後に出された民生安定対策を2023年にはさらに拡大しなければならない。住居安定も重要だが、今はそれより庶民の生活負担の安定に重点を置かなければならない。特に自営業者と小商工人に対する金融支援対策を細かく組まなければならないだろう。低所得脆弱階層に対しては、直接的な金銭支援よりは生活必需品あるいは必須サービス中心にクーポンを活性化し、自営業者および小商工人を同時に助ける方法を活性化させる必要がある。そして物価安定と自営業消費活性化を同時に得られるよう付加価値税を一時的に「2%」へと引き下げる方案も推進してみる価値がある。消費促進と共に投資を活性化させるための大幅な政策転換が必要だ。法人税を果敢に引き下げる必要がある。すべての企業の法人税を一括引き下げ、「金持ち企業に免税」という批判から抜け出さなければならないだろう。尹政府が打ち出した規制革新推進方向(2022年6月14日)と経済規制革新戦略会議、規制革新TFが良い結実を結ぶよう、着実に関心を持ってモニタリングしなければならない。一つの規制が導入される際、二つの規制を同時になくすワンインツーアウト制度が根付くよう持続的に監督しなければならない。韓国経済は以前もそうだったように輸出によって経済が成長する国だ。輸出がなければ経済がない。内需だけでは成長持続の可能性がない。そのような点で、尹政府の輸出優先政策は非常に望ましい政策転換だ。2022年11月23日、政府は大統領を中心に第1回輸出戦略会議を開催し、全省庁が輸出支援に総力を傾けるという決議を示した。5大輸出大国を越えて4大、あるいは3大輸出強国も不可能なことはない。そのためには、首都圏半導体中心の輸出構造で地方の伝統産業の輸出競争力を蘇らせる政策を積極的に繰り広げるべきである。亀尾(クミ)が再び蘇り、木浦(モクポ)と群山(グンサン)が復活しなければならない。釜蔚慶(釜山・蔚山・慶尚南道) が活気を取り戻し、麗水光陽湾(ヨスシクァンヤンマン)が活気に満ちていなければならない。多くの専門家は財政健全性を懸念している。2023年の予算もそのような懸念を基に、2022年に比べて約6%減の639兆ウォンに策定した。しかし2023年はコロナショックがまだ消えていないうえに、インフレと金利引き上げと国際的不景気で厳しい一年になるだろう。そういう側面からみて、来年に限って例外的に多少の拡張政策を展開し、貧しい階層を助けるのは国会と行政府の正当な責務だ。
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