規則はゲームを公正かつ安全にする役割をする。しかし、誰かがルールを自分たちにだけ有利に作ることができれば、私たちはそのゲームで勝てるだろうか?これまで我々はしばしば国家対抗戦で自国の優勝のために小細工を弄する大会を見て、試合がうまくいかない時、該当国家の拙劣さのせいで悪口を言ったり、あらゆる稚拙な判定の中でも屈せず逆境を乗り越える韓国選手たちを応援したり、このような状況を受け入れざるを得ない無力な状況に憤りをぶちまけたりした。
現代社会におけるゲームのルールは「標準」といえる。過去の世界的な企業は、進んだ技術で絶対的な位置を占めることができた。しかし、情報技術の発展とともに、個人や企業自らが全てをやり遂げられない状況に直面している。結果的に企業は互いに協力して団結し、自分たちに有利な状況を作れるようにした。国も同じである。いかなる国も国際協力なしでは存在できない時代になった。
韓国の2021年の貿易依存度は70.1%を記録した。ここで貿易依存度とは、一国の経済が貿易に依存する程度を示した指標であり、依存度が高くなるほど経済の安定性が損なわれる可能性も高くなることを意味する。韓国は原油を全量輸入しているため、最近の国際原油価格の変化に直接的な打撃を受けるのがこのような理由のためだ。
また、韓国製品を海外に輸出しようとする場合、流通する前に安全に対する認証を受けなければならず、認証基準は貿易技術障壁(WTO/TBT)協定によって国際標準を使用するようにしている。電気電子製品を除けば、ほとんどの輸出入品は国際標準化機構(International Organization for Standardization・ISO)の標準に該当する。1947年に発足したISOは、多くの国々が標準制定団体で選ばれた代表で構成された標準化機構であり、韓国もISOに加入しているものの、まだ機構内に影響力を及ぼすルールメーカーの位置ではなかった。
去る20日、産業通商資源部はISO次期会長選挙にチョ・ソンファン現代モービス代表取締役が立候補したことを発表した。ISOは前述のように標準数基準で世界最大規模の標準機構で、ISO会長は総会と理事会議長として意思決定に最も大きな影響力を行使する位置にある。中国も候補として出馬したので、9月のISO総会で次期会長選挙を通じて選ばれるだろうが、韓国人として最初の会長出馬という点で大きな意義がある。
これまで国際標準の発展は長い間産業化された西欧諸国が主導してきた。反面、韓国標準の歴史は産業化とその脈絡を共にする。1960年、経済開発計画を通じて産業化政策を樹立し、工業標準化法を制定してから標準に対する関心が始まった。これまで韓国はISO理事会メンバーとして韓国人41人が傘下技術委員会議長と幹事として活動し、国際標準化と国際標準化機構に寄与してきた。
しかし、ISOで発表した国別活動順位で韓国は惜しくも8位を記録している。いくら韓国が自らアジアを代表すると言っても、今回が最初の会長出馬という部分は残念だ。2015~2017年に会長職を務めた中国をはじめシンガポールもISO会長を輩出したことがあり、日本とインドはすでに2回ずつ会長を歴任したためだ。それにもかかわらず、今回の会長出馬を通じて、韓国も国際標準機構で意思決定に多大な影響力を及ぼしかねない位置に立つことができると期待される。また、ISO会長選出は韓国が常任理事国に含まれる可能性も増大させる重要な要因だ。
チョ・ソンファン候補者は、グローバル自動車部品メーカーの代表取締役としてリーダーシップと能力を認められたのはもちろん、現代自動車の米技術研究所法人長をはじめ、様々な国際経験を通じて国際標準化に対する深い理解と高いレベルの英語駆使能力を備えている。もちろん期待感を高めるのに十分だが、まだ選挙が終わったわけではない。韓国は中国という強力な候補と競争しなければならない。
現在、世界中の企業がグローバル標準を指向しており、すでに発展分野では標準制定のための国家間競争が起きている。中国も例外ではない。ただ、韓国の悪い習慣が誰かがするとすれば、自分がするわけでもないのに余計な言いがかりをつける。もちろん当選すれば該当企業にも大きな光栄だろうが、会長当選は韓国の国際的地位や国格とも関連している。
すでに韓国の国内企業も合従連衡を加速させている。電気自動車(EV)はもちろん、バッテリーなど新産業という共通分母の中で、韓国企業は境界を超えた協力が行われている。このような時代にまだ標準を「固定された画一化」と誤解し標準化を敬遠する人もいるが、すでに企業間には国際標準を掌握しなければならないという認識の共感の中で産業間境界を跳び越える提携がなされている状況だ。
個人的に今回のISO会長出馬だけでも意味があるが、韓国の国内産業と企業の発展と標準化に対する韓国の努力に対して世界が認められる契機になってほしい。最初の会長出馬が韓国初のISO会長選出につながることで、韓国企業の標準化水準を高めるための多様な活動が一層活発に行われることを期待している。
また、あきらめずに続いた挑戦の末に宇宙を抱いた「ヌリ号」のように、企業だけでなく韓国政府と国民皆が国際標準に対する関心と認識の共感形成を通じて標準専門家養成および国内状況に合うよう土着化された国際標準のルールメーカーである大韓民国を夢見る。もう一度、9月に嬉しくて偉大なニュースが伝えられることを願う気持ちで、選挙の最後まで健康に気をつけ、最善の努力を尽くすことを国民の一人として応援する。
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