[キム・グァンソクのコラム] グローバルリショアリング戦争、韓国の戦略は?

[写真・執筆=韓国経済産業研究院のキム・グァンソク経済研究室長]


永遠なものはない。「世界の工場」と呼ばれていた中国は、もはやそのような修飾語に相応しくない。イギリスが一時期世界の中心になっていた時期があり、日本も同じだった。覇権は動くものだ。変化する環境に適切に対応できなければ落とし穴に落ちるわけだ。

リショアリング戦争と脱グローバル化の進展

2010年代に新保護貿易主義が登場し、自国優先主義を叫ぶ列強は海外に出ている企業を本国に回帰させようと競争してきた。さらに、新型コロナウイルス感染症(コロナ19)はグローバル分業構造を崩壊させ、各国は先を争ってリショアリング政策を打ち出している。グローバルリショアリング戦争が始まった。

リショアリングは脱グローバル化(De-globalization)を進展させている。世界の海外直接投資が減少する傾向だ。海外直接投資の流入額(Foreign Direct Investment Inflow)が2015年に2兆ドル以上のピークを記録して以来、減少傾向にある。UNCTADは、海外直接投資の流入額が2020年と2021年に1兆ドル以下へと減少するだろうと見込んだ。

主要国のリショアリング政策

フランスは医薬品のサプライチェーン(供給網)を強化するため、30種類あまりの医薬品の国内生産を検討しており、「パラセタモール(Paracetamol・アセトアミノフェン)」の生産をリショアリングする計画を発表した。フランスはすでに2013年からリショアリングを促進するため、診断プログラム(コルベール2.0)を開発し、「MIF(made in France)」という国家ブランドを活用して展示会を企画して数百社の企業が参加するようにした。ルノー自動車、ミシュランタイヤなどこの4年間、約40社がリショアリングを行った。

リショアリング政策で米国は欠かせない。2010年に法人税率を38%から28%に引き下げ、リショアリング企業の工場移転費用の20%を補助した。トランプ政権発足後、法人税率をさらに21%台へと引き下げ、戦略産業について施設支援や原材料輸入関税の引き下げなど、積極的に取り組んできた。A.T. カーニー(Kearney)のリショアリング指数は、2011年を除けばマイナス水準を維持し続けてきたが、2019年には98ポイントを記録した。

米国は、中国に対するGVC(Global Value Chain)の依存度を減らし、独自の生態系を構築していく戦略だ。このため、米国本国に回帰するリショアリングだけでなく、隣接国家に旋回して生産ラインを分散する「ニアショアリング(Near-shoring)」も誘導している。金融インセンティブを支援し、250億ドル規模のリショアリングファンドを造成する計画だ。米国上院は「CHIPS for America Act」を推進し、半導体の自国生産のための工場建設と研究開発(R&D)支援及び税額控除など220億ドルの支援を実施する計画だ。

この他にも、欧州主要国や日本など先進国政府は、海外現地法人を自国に誘導している。税金減免などの支援策を通じて、海外進出企業の国内Uターンを誘導してきた。2020年上半期に中国に進出した日本企業87社が補助金を受けてリショアリング、あるいはニアショアリングを進めた。約700億円に達する補助金が生産拠点を多様化し、サプライチェーンを安定化するのに使われた。

一方、中国は製造基地を守ろうと努力している。2017年に発表した「中国製造2025」は代表的な対応策である。中国製造2025は、ロボット、通信機器、半導体、医療・バイオなど先端製造業を集中的に育成する計画を盛り込んだ。コロナ19以降には同政策の一環として医療機器メーカーに大規模な補助金が投入されており、世界はマスク需要の半分以上を中国に依存するなど、中国は市場支配力を手放そうとしない。徹底的に緩和された規制環境を許容し、工場敷地を支援するとともに内需調達を圧迫するなどの動きを見せている。

韓国はどうだろう? 2020年下半期から最も重要な経済イシューは「リショアリング戦争」だ。世界各国は企業を本国に回帰させるための政策に総力を傾けるだろう。政策と政策の戦いになるとみられる。企業は持続的に海外へ出ている。韓国の海外への直接投資は2012年以降、持続的に増加している。韓国の海外新規法人の設立数は2012年の2788から2019年に3953に増加し、投資金額は2012年の296億ドルから2019年には約619億ドルに拡大した。

リショアリング戦争、韓国はどう勝ち抜いていくのか?

リショアリングに対するコンセンサスは形成されたものの、現実的な誘引策は提示されていない状況だ。Uターン企業への支援政策を通じて税制・資金・人材などの補助を行い、支援対象を拡大しているが、企業にとって海外事業所を撤収するほど魅力的ではない。どうやってリショアリング戦争で勝てるか?オフショアリング企業がなぜオフショアリングをしたのかを知るべきだ。つまり、何が原因でオフショアリングしたのかを精密に把握し、それぞれの区分に合わせて細分化された政策を提供しなければならない。

まず、労働力を理由に海外に出た企業はリショアリング政策の対象ではない。安い人件費のために海外に出た労働集約的産業には、規制緩和や税制支援をしても誘引策にならない。10分の1にも満たない安い人件費を韓国で補助することは厳しい。リショアリング政策の対象から果敢に除外することができる。もちろん、長期的に製造のスマート化を図り、漸進的にリショアリングを導く構想が必要だろう。

第二に、ニアショアリングが代案となり得る。企業が現地法人を置く理由は労働力だけではない。それは市場の近くにあるからだ。医療・衛生用品のように安保面で重要であったり、主力産業の原資材などのように国家経済的に重大な産業はGVCが崩壊する過程でも安定的な需給が持続できるよう、サプライチェーン構造を安定化しなければならない。ニアショアリングできるような現実的な支援策が必要だ。

第三に、リショアリングが可能な産業を選別し、支援を集中する必要がある。緩和された規制環境と技術交流などを理由にオフショアリングした高付加価値産業が主な対象になるだろう。経済自由区域・自由貿易地域・規制フリーゾーンのような政策手段があり、規制のサンドボックスや規制自由特区などの装置を活用しなければならない。海外現地法人や海外主要企業が来ようとする韓国だけができる特化した誘引策が必要だ。例えば、5Gの先導国家であり、デジタルニューディールの核心の一つが5Gインフラの普及であるだけに、5Gインフラを活用してR&D、テスト運用、サービス開発を試みる産業群が集積できる戦略的拠点を設けるのはどうだろうか。






 
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