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トヨタ自動車の豊田章男社長(写真)は11日の決算発表会見で、昨年6月の就任時に例えた「嵐の中の船出」の様な状況で舵を握り、今回の会見でトヨタ再生への手応えを語った。
トヨタ自動車は、2011年3月連結決算の業績予想で、営業黒字は前期比８９．８％増の２８００億円になる見通しを示した。、「攻め」の姿勢に入るトヨタ自動車の戦略が提示した。
トヨタ自動車は、生産工程を絶えず見直し、生産ラインに必要なときに必要な数だけ部品が届くようにして在庫の無駄をなくしたり、不具合が生じたらすぐにラインを止め不良品を出さないようにしたりして、効率化を極めるトヨタ生産方式で世界中のメーカーから、無駄がなく高収益をもたらす方式として称賛された。
しかし、その後、拡大路線に方向を転換、世界中に工場を増設した。2008年のリーマン・ショックで新車販売が低迷した事で、在庫が膨らんだ事で赤字に転落、「負の遺産」を抱えた。さらに、大量リコール（回収・無償修理）問題の逆風が吹き荒れた事で、世界のトヨタが危機に立たされていた。
だが、トヨタ自動車は「負の遺産」を生み出してきた拡大路線と決別。新工場建設の中止や規模縮小、生産ラインの休止と言うトヨタ生産方式の原点に返り、「守り」を徹底。さらに、得意の次世代環境車（エコカー）と品質への信頼回復で、ようやく、光明が見え始めた。
自動車界の「巨人」トヨタ自動車が、再び１兆円を超えるような利益を計上のためには、豊田章男社長の舵取りにかかっていると言っても良いだろう。
◇「攻める分野」に新興国市場
「やっとスタートラインに着いた。今年度がまさに新しいトヨタの再出発の年」。決算会見で、豊田社長は新興国市場などを「攻める分野」とした上で、経営資源を最適に配分して持続的な成長を目指す考えを強調した。
2010年3月期連結決算は、売上高が前期比7.7％減の18兆9509億円、最終黒字は2094億円（前期は4369億円の赤字）だった。同時に発表した2011年3月期業績予想は、売上高は前期比1.3％増の19兆2000億円、最終利益は48.0％増の3100億円を見込んでいる。
豊田章男社長は「一連のリコール問題など一瞬たりとも期の抜くことのできない１年だった。今年度は新しいトヨタの出発の年と考え、新たな成長戦略にかじをきっていきたい」と述べ、今後、次世代環境車と新興国を強化する考えを示した。
また、豊田社長は、「成長に向けた投資と収益構造改善による体質強化を目指すと述べ、、世界規模で生産体制を見直し、最大300万台にのぼった余剰生産能力の解消を進める方針を明かした。
新興国市場では、現地生産の拡大に注力する。中国では長春新工場の１２年前半の稼働を目指すほか、カムリのハイブリッドモデルの生産・販売を始めた。インドでも新工場を建設中だ。
一方、市場が成熟する先進国では、生産車種の見直しや為替変動に強い柔軟な生産体制を構築する。北米を収益的にも重要拠点と位置づけ、開発から生産にいたるまでの自立化を推進。日本は「開発・支援・輸出拠点」として、新技術の導入や、同じ車台での生産を増やす体制へと移行する。
◇新興国市場での激しいシェア争い
これらの変革により、ダイハツ工業と日野自動車を含めたトヨタグループの今期の世界販売台数は、前期より5万3000台上積みした729万台を計画。新興国市場を抱えるアジアで11.3％増の109万台を見込む。
ただ、新興国市場では、欧米メーカーとの激しいシェア争いが待ち受けている。トヨタは来年、新興国向け専用小型車「エティオス」をインドに投入。中国でもカローラタイプの小型車の開発を急ぐが、出遅れ感は否めない。
2010年3月期で1800億円の減益要因にとどまった大量リコール（回収・無償修理）問題も、水面下で尾を引いている。訪日中のラフード米運輸長官は10日、トヨタに対する追加の制裁金について上積みに含みを残す発言をした。震源地となった米国市場は直近の販売台数こそ大幅に回復しているが、販売奨励金の効果で好調を今後も維持できるかは微妙だ。
豊田社長は「現在も嵐の中という状況は変わらないが、遠くに晴れ間も見え始めた。乗務員（従業員）が一枚岩になったという実感がある」と自信を見せた。２兆円を超す営業黒字を目指す、トヨタの本当の構造改革は始まったばかりだ。
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