大統領選挙まで残りわずかだ。次期大統領は国の運命を左右することもありうる。ポピュリズムに振り回されて誤った指導者を選び、ひどい代価を払っているベネズエラのような道を進んではならない。
指導者の資質と公約は指導者を選ぶために欠かせない二つの項目であるが、資質がより重要だと思う。公約は状況によって変更可能だが、資質は変わらないからだ。指導者の資質のうち品性と国政運営能力が重要だ。候補らの品性は、過去の行動から予測できる。過去の言行は、候補の品性を判断する基準になる。
国政運営能力は総合的な判断能力、公益優先精神、国民和合、未来志向的な洞察力と眼目に基づく。
大統領は主要政策における総合的な判断をする最終的な意思決定者である。例えば論議が多い脱原発政策を見てみよう。ほとんどの新しい政策には肯定的な面と否定的な側面がある。肯定的な面は、映画「パンドラ」のように、原発が誤って発生する莫大な社会的被害を予防することができる。否定的な側面は、安価なクリーンエネルギーの確保や気候変動への対処、安保、関連産業の崩壊などの側面で深刻な社会的コストを発生させる。
脱原発政策で発生する社会的便益と費用のうち、どちらが大きいだろうか。原発が間違う確率は極めて低く、脱原発で発生する費用は甚大だ。
飛行機事故が起これば致命的だが、事故が発生する確率が極めて低く、便益が大きいため利用するのと同じ理屈だ。脱原発政策は、総合的な判断の観点から見直されるべきだ。
大統領は陣営や側近の利益追求ではなく、国家と国民の公益を優先的に追求しなければならない。最近、論議になっている 「大庄洞(デジャンドン)疑惑」の本質は、公益に還収されるべきだった金が、公的権力を行使した一部の人のポケットに入ったことだ。正当な私益追求は社会発展の原動力だ。しかし、公職に就いた指導者は、本人はもとより側近にその地位を利用して私益を追求させてはならない。このような私益追求が認められれば、許認可権が乱用され、公正性が崩れるためだ。朴槿恵(パク・クネ)前大統領が弾劾を受けた主な理由も側近の私益追求にあったと言っても過言ではない。
現政権の積弊清算と「曹国(チョ・グク)事態」を経験し、韓国社会の陣営間葛藤は健全な社会発展のための合理的競争関係の水準を越え、相手を敵視する段階にまで至ったのではないかと懸念される。相手を尊重し、反対意見を傾聴する姿勢が指導者に求められる。指導者は偏狭してはいけない。反対の声にも耳を傾け、政策に反映する可能性を絶えず探さなければならない。
故金大中元大統領は、自分を迫害した故全斗煥(チョン・ドゥファン)前大統領を前任大統領として礼遇し、国民和合を追求して国民の心を一つにした。国家不渡り事態に直面して発生した国際通貨基金(IMF)金融危機事態を賢明に克服する原動力となった。
政治指導者は、国民分裂よりも国民和合を追求する時に歴史に残る指導者になるだろう。韓国社会の持続的な発展のためには、国民分裂よりは国民和合政策を展開することが役に立つだろう。積弊清算のような政策が繰り返されれば、陣営間の葛藤は深まり、国家発展のためには望ましくない結果を招くだろう。
大統領の未来志向的な洞察力と眼目は、国家発展の原動力になる。先日死去した故盧泰愚(ノ・テウ)前大統領の北方政策は、成功した政策と評価されている。国際情勢に対する慧眼とオリンピック開催の機会をうまく活用した。盧前大統領は、外国政治において大きな業績を残しただけでなく、南北基本合意や国連(UN)への同時加盟、仁川(インチョン)国際空港の着工、盆唐(ブンダン)新都市建設による不動産価格の安定など、国内でも立派な業績を残した。また、次期大統領の公正な選挙のために中立内閣をつくり、金泳三(キム・ヨンサム)と金大中氏の激しい競争を雑音なく終えた。
現政権はどのような業績を残したのか。日本と前政権の約束破棄によるギクシャクした関係が続き、積弊清算で陣営間の対立が深まった。不動産政策の推進と検察改革に向けた高級公職者犯罪捜査処の設置当時、野党の意見は無視された。結果的に外治や内治においてこれといった成果を見出すことは難しい。理念に基づいて支持層だけのための政策を展開すれば、歴史に残る業績を達成することはできない。今の政府の役割は公正な選挙を行うことにある。
候補の資質に加え、公約も重要だ。青年世代に対する未来ビジョン、重課税による過度な住居費、コロナ19、国家負債の急増、米国と中国の葛藤に対する韓国の立場、北朝鮮の核武力脅威、気候変化の対処などの難題に対して候補たちが提示する公約がどれほど妥当性があるのかをよく検討しなければならない。
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