[ソ・ジンギョのコラム] 安定的な供給網構築のための政府の役割は

[写真・執筆=対外経済政策研究院のソ・ジンギョ先任研究委員]


新型コロナウイルス感染症(コロナ19)に続き、ウクライナ事態など国際情勢の不安定で供給網問題が再び浮上している。先週、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対外経済安保戦略会議を主宰し、深刻化する供給網リスクに先制的に備えるために、安全性中心の供給体系への転換が急がれると強調した。しかし、安定的な供給網構築は容易ではない。緊急時の対処はもとより、短期や中長期に分けてグローバル供給網の変化の方向性を考慮するものの、企業の立場から現場で適用可能な実践的解決策を探さなければならないためだ。

緊急状況発生時の対応は、現場で緊要な核心品目の在庫を普段より余裕を持って備蓄しておくこと以外は、これといった案がない。備蓄には費用が伴うものだ。したがって、核心はどのレベルの備蓄が最も効率的なのかに絞られる。ところで、これは企業の内部状況や経営戦略と緊密に連携しているため、企業がよく知っている。政府が関与する余地はほとんどないと言っても過言ではない。企業自らも会社の短期成敗がかかっているので、誰よりも効果的な対策作りに全力を尽くすしかない。緊急時には、政府の慎重な対応が求められる。うかつな行動にでてより事態を悪化させる場合、かえって企業の対応を困難にしかねないことに留意しなければならない。

供給網安定の短期対応策の多くは、従来の主な生産地域へのプラスワン(one)政策だ。例えば、中国内の特定地域に対する生産依存性を減らすため、中国内の他の地域または近隣の他の東南アジア諸国への生産配分が代表的な例である。しかし、中国内の特定地域での生産が行われているということは、生産効率の面から既に最適化されている結果である。すなわち、当該地域での生産がインフラや賃金水準、必要な人材の調達、税制優遇などとともに当該地域での生産のために設計された部品の物流体系まで効率的に組まれた最適な組み合わせなのである。そのため、これを変化させることは生産費の増加を意味し、企業の経営方向はもとより競争力にも直接影響を与える。

にもかかわらず、供給網の安定のため、他の地域での生産を準備しなければならないが、最も大きな困難は、既存の生産地域に代わる候補地があまりないということだ。他の候補地のインフラがいくらよくても、賃金が高ければ生産移転が容易ではない。インフラが良くて賃金が低くても、生産に必要な技術人材の調達が難しければ問題である。不安な政治環境にもそっぽを向くわけにはいかない。東南アジア諸国の中ではベトナムが可能な候補地だが、実際、中国に100%取って代わる地域を探すのは難しいというのがグローバル企業の見解だ。このような理由から、短期対策は既存の中核地域で8割を生産し、残りの2割はやむを得ず他の地域で生産する8:2の生産調整、または中国プラスワン(one)政策が打ち出されたのだ。そういう意味で、米国の中国排除供給網の構築は短期間で行われる可能性が低い政策だ。

中長期的な対応策のポイントは、技術発展や気候変動への対応だ。もちろん、米国と中国の技術覇権競争が世界経済の不確実性を増幅させており、これを考慮せざるを得ない。しかし企業の立場から米中対立は予測しにくく、何より企業の投資は十数年以上の遠い未来を見て決定することであるため、より根本的な供給網再編の変化の流れを読み取ることが最も重要である。このような立場からみて、中長期的なグローバル供給網の変化に最も大きな影響を与える要因は、技術(特にデジタルテクノロジー)の急速な発展と気候変動への対応に要約できる。

今後、デジタル社会への転換が予想されるだけに、デジタル貿易の拡大を始め、デジタル技術の急速な発展や多様な自動化技術が急速に開発され、実生活に適用される見通しだ。特に先端自動化技術によって産業構造も革命的な変化が予想される。このため、低賃金中心の既存供給網は次第にそのメリットがなくなり、先端技術と知識中心の供給網が未来供給網の主役になるだろう。自然に先端技術や装備、そしてこれを運用できる高級人材の調達の可否やそれを裏付ける透明な制度などが中長期グローバル供給網を決める核心要因となる。サムスンが米国に半導体工場を建設することにしたのは、米国の圧力も原因になり得るが、それよりは米国の関連先端技術とインフラ活用、消費市場としての重要性などが最も大きな原因でもある。

気候変動への対応も、グローバル供給網の構造変化に大きな影響を与える。地球の課題である気候変動に対応するため、炭素排出の激しい技術や商品は次第に多くの制約を受けざるを得ない。自然に炭素排出ゼロ(0)、あるいは低炭素排出技術が優遇され、そのような商品やサービス供給が可能な国や地域との連携が強化され、いわゆるグリーンサプライチェーンが形成されるだろう。そうなると、グリーンテクノロジーという側面で既存の先進国が新しい供給基地として比較優位を持っていることは明らかだ。劣悪な労働環境など労働人権が強調される場合、生産基地としてこれまで発展途上国が持ってきたメリットは徐々に減っていくと考えられる。結局、新しく再編されるグローバル供給網で韓国が重要な役割を果たすためには、先端技術(グリーンテクノロジーを含む)の開発と高級人材の養成、先進化した制度定着が欠かせない。政府の役割がまさにここにある。

最後に、韓国が中長期的な安定供給網の構築のために考慮しなければならない要素は、足りない原材料の安定的な供給問題だ。レアアースは一例に過ぎない。韓国に足りない核心的な基礎原材料の安定的な供給網構築のために、韓国が持つ先端技術を提供し、相手国の資源を利用して互いに共生する案も検討しなければならない。国際協力にも無料の昼食なんてものはない。
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