[イ・スワンのコラム] 米中貿易交渉と中国の構造的変化

[写真=亜洲経済(イ・スワン論説委員)]


今月30~31日に米国と中国の貿易交渉を控えて緊張感が漂っている。習近平国家主席の「経済参謀で腹心」として知られる劉鶴副首相(66)は対米交渉チームを率いてワシントンを訪問し、トランプ政府の対中強硬派のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表と談判を行う予定だ。昨年12月末に習主席とトランプ大統領が辛うじて合意した貿易戦争「90日休戦」の期限である3月1日までに交渉妥結が可能だろうか。事実上、今回の会談の結果にかかっている。

米中両国は今月7~9日、北京で次官級実務交渉を開催し、米国産エネルギーおよび農産物購買の拡大による貿易不均衡の改善など両国間の構造的難題について論議した。劉副首相は実務交渉初日に突然登場した。米国との大規模貿易黒字を減らすための通商レベルの努力にはすでに双方が相当な意見の歩み寄りをみせているが、米国が望む中国経済政策の「構造的変化(structual changes)」をめぐっては進展がほとんどなかったと知られている。

連日トランプ大統領は楽観的な口調で貿易交渉の進展を強調している。しかし、トランプ政府内で合意に対する悲観論が広がっていると現地メディアは伝えている。中国が米国製品の輸入を増やすことには積極的だが、実質的な制度改善には消極的な態度を見せているからだという。何よりも米国は、海外企業に対する技術移転の強要と知識財産権の侵害、サイバー窃盗など、いわゆる「技術窃盗」と呼ばれる不公正な慣行を制度的に改善することを中国に要求している。このような要求が反映されていない合意文に、ライトハイザー代表やトランプが署名をするのは想像し難いということだ。

ウィルバー・ロス米商務長官は24日(現地時間)、米中貿易交渉について両国は「多くの問題(lots of lots of issues)を抱えている」とし、合意に達するにはまだまだ遠いと明らかにした。彼はこの日、経済メディアCNBC放送とのインタビューで、米国は中国の構造改革と公正な通商関係のための処罰規定に力を入れていると説明した。また、中国が世界の先端技術産業を支配するための「中国製造2025」戦略から米国企業を保護すべきだと強調した。中国が米国との貿易黒字を減らすために、米国産輸入を拡大するだけでは十分でないという意味だ。

今回の米中会談の成否は中国が米国の「構造的な変化」要求をどの程度まで受け入れるかにかかっていると考えられる。中国としては米国の立場を受け入れるためには、金融、サービス、セキュリティ分野で各種の関連法律の改正が必要なだけでなく、国家経済の構造的改革と修正も避けられない。だからといって、頭ごなしに米国の要求を拒否することもできない立場だ。米中貿易葛藤の影響で中国経済の成長が目立って鈍化しているためだ。

貿易戦争の余波で昨年の中国貿易は輸出と輸入ともに大幅に減少した。GDP成長率は28年ぶりの最低値である6.6%へと急落した。貿易交渉が決裂し、「関税爆弾」戦争が再び本格化すれば、2019年に6%台の成長率を維持することさえ厳しいという懸念が中国内部でも提起されている。こうした状況で習主席は自分が直接乗り出して「ブラックスワン(黒い白鳥・甚大な影響をもたらす想定外の事態)」と「灰色のサイ」の危険を徹底して予防するよう強調した。ブラックスワンは発生する確率が低いものの、一旦現れれば大きな衝撃を与えるリスクを意味する。人民元の急落による資本流出、これによる全面的な金融危機の可能性が代表的な例だ。灰色のサイは、不動産バブルや企業デフォルトの増加など、目に見えているが実際の脅威まで注目されない危険だ。

ロス長官はCNBCとのインタビューで、米中間貿易交渉の時限延長可能性について「今としては予断できない。期限が近づいたら大統領と交渉参加者がその時点での状況について非常に真剣に話し合うことになるだろう」と即答を避けた。

こうした状況で両側が「完全な妥協点」に達すると期待するのは無理のようだ。しかし、交渉妥結への期待感はまだ冷めていない。中国交渉団を率いる劉鶴副首相は代表的な「改革主義者」であり、中国経済モデルの設計者とされている。ホワイトハウス国家経済委員会(NEC)委員長は24日、FOX(フォックス)ニュースとのインタビューで「劉鶴副首相が決断力を発揮するだろう」と 楽観的な見方を示した。
 
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