[インタビュー] 駐韓テュルキエ大使「韓国との協力の余地が大きい『兄弟の国』にぜひ訪れてほしい」

[写真=駐韓テュルキエ大使のサリムラート・タメール(Salih Murat Tamer)氏]


2月6日午前4時頃(以下現地時間)、テュルキエ・ガズィアンテプで震度7.7の強震が発生した。テュルキエ共和国が樹立されて以来最も強力であり、1999年イズミット大震災以後、死傷者や被害額が最も大きかった地震であっただけに世界の悲嘆を招いた。しかし、これが終わりではなかった。最初の地震発生から9時間が経過した同日午後、震度7.5の強震がテュルキエ南東部のカフラマンマラシュで発生し、被害が拡大した。大韓民国の救助隊をはじめ世界各国の特別救助隊がテュルキエに駆けつけた。テュルキエは70年前の6·25戦争当時、韓国を助けてくれた『兄弟の国』、テュルキエに韓国から救助隊が出国するとき、機内はテュルキエの乗務員たちの感謝の動画が流れ、涙がとまらなかったという。地震から3か月。サリムラート・タメール(Salih Murat Tamer)駐韓テュルキエ大使に現在の状況や再建事業などについて聞いてみた。
 
ソウル中区奨忠洞(チュング・チャンチュンドン)1街のテュルキエ大使館で会ったサリムラート・タメール大使は「残念な状況にもかかわらず、現在、捜索および救助活動は完了しています。今は一部の街で倒壊した建物残骸の撤去作業が行われているだけです。」

タメール大使は、同時に被災地の再建事業が進められているとし「単純に建物を建て直すのではなく、電気やガス、上下水道などの都市基盤施設への復旧も同時に行われなければならないため、非常に大きな課題」と付け加えた。

今回のテュルキエ震災に多くの韓国企業とBTSを含むK-POPスターが寄付に参加した。ある30代の青年は、韓国戦争当時、韓国の子どもたちを助けたテュルキエ兵士の姿を、70年後の今、テュルキエ地震現場で現地の子どもたちを助ける韓国救助隊の似顔絵で描いてタメール大使に渡し話題になったりもした。

「テュルキエ支援に乗り出してくださった多くの韓国人に感謝します。特に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が主導的役割を担ってくださったことに感謝します。尹大統領が地震の犠牲者を追悼するために駐韓テュルキエ大使館を直接訪ねてくださいました。また、国会議長と外務省・国防省・女性家族部長官を含む10人余りの長官が直接弔問しに大使館に訪問し、その他にも韓国の官僚、国会議員だけでなく数多くの市民も弔問に参加してくださいました。」

タメール大使は何よりも「韓国人がテュルキエ震災をまるで自分たちの家族問題や韓国のことであるように思っていた」ことに感動したと話した。「まるで釜山や大田、大邱で起きたようでした。韓国で起きたことのように、多くの韓国人が最大限の物品と金銭的支援をしてくださいました。」

◆大統領から一般国民まで皆が乗り出した「兄弟の国への支援」

「数日前までテュルキエにあらゆる寄付物品を送った」と話を続けたタメール大使は、寄付した物品が非常に多く、倉庫を2ヶ所も借りなければならなかったと説明した。また韓国企業に助けを要請して物品をテュルキエに運送することができたという。

彼は「キムチまでテュルキエに送り、韓国人は世界中のどの国民よりも『兄弟愛』が強かったです。良い友達と良い兄弟は良い日を共にしますが、厳しいときには真の兄弟、真の友人だけがそばにいます。これが韓国人がテュルキイエ、世界中に見せてくれた姿です。」と語った。

韓国とテュルキエ両国の国民は、お互いを『兄弟の国』と呼ぶ。かつて両国はシルクロードを挟んだ遠い国だった。文化的な違いや、強力な同盟関係でもないにもかかわらず、両国は今お互いを『兄弟の国』と呼んでいる。

「テュルキエと韓国の関係は、ほぼ2000年前にさかのぼります。韓国人とテュルキエ人はお互いに交わって暮らし、喧嘩したことがないので、いつも良い関係を持っていました。」

彼は「戦ったことのない国家が兄弟国になった決定的な契機は韓国戦争(朝鮮戦争)」と話した。「1950年代に韓国戦争が勃発、テュルキエはおよそ2万1000人を派兵しました。そのうち996人が韓国で命を落としています。」

韓国戦争当時、16カ国から派兵された3万6000人が韓国人の生命、自由主義、民主主義、自由のために戦って命を失った。

タメール大使は「テュルキエは英国と米国に次いで最も多くの犠牲を払った国」とし「1950年代の韓国は今日の韓国とは全く違った。韓国はその後発展を重ね、今日世界10位以内の経済大国になり、ほぼすべての国の心と経済に強い印象を残すことになった」と振り返った。

続けて「1950年に韓国戦争がなかったら今日の韓国を見ることができなかっただろう」とし「だから私たちはすべての悪いことから良いことが生まれるという事実を悟らなければならない」と語った。 「私たちはあの時韓国を助けたことにとても喜んでいます。韓国の発展に小さな部分でも寄与したのです。テュルキエだけでなく、16カ国のみんながそうです。」

◆地震で停止している文化・商業交流の拡大を希望

タメール大使は文化交流の重要性を強調し、両国は言語構造が同じ(ウラル・アルタイア)系に属し、似た単語が多いという点、そして尊称語があるという点など言語的類似性に言及した。例えば、『お母さん』を意味する母親(eomma)という単語は、テュルキエ語の『アンネ(anne)』と似ていて、テュルキエでも韓国のように家の中では靴を脱いで床に座るという。テュルキエの伝統でも床に座って尊重し、世話をすることが非常に重要な部分だということだ。

また、両国がお互いの国家訪問を促す韓国訪問の年、テュルキエ訪問の年のようなイベントを行っていたが、数年前からコロナパンデミックによってそのような交流が減った。コロナエンデミック以後、韓国と文化的・商業的交流が徐々に活発になりはじめたが、地震の影響で停止したことは非常に残念だ。

「地震発生により3~4か月前の状況に戻されたと思います。私たちはとても良い道を歩んでいると信じています。今年はテュルキイェ共和国宣言100周年でもあり、韓国戦争73周年です。いくつかのバンドや軍楽団が韓国に来てコンサートを行う予定です。テュルキエ駐在韓国大使もおそらく多様な文化行事の計画を立てているでしょう。」

◆世界中の人々の心をつかんだ韓国のソフトパワー

タメール大使はこれまで自分が見守ってきた韓国人のことを『勇敢な人々』と評価した。「韓国について肯定的な話は常にあります。だから韓国のために何かをするのは簡単です。そして最近韓国がどのように発展しているのか考えてみると、韓国を好きになるのは難しいことではありません。韓国は経済大国であるだけでなく、世界で主要なソフトパワーの一つだと信じています。」

彼は「テュルキエ人にとって韓流と韓国化粧品、K-POP、K-料理、K-映画などが広く広がり、バスケットボールのキム・ヨンギョン、サッカーのキム・ミンジェなどスポーツスターたちも親しまれている」と伝えた。特にBTSはタメール大使の娘も熱血ファンだと。

世界中の人々の心と家庭に肯定的な方式で近づいている韓国文化は「非常に強力な武器のようだ」と表現した。

「韓国の技術と文化はいつも肯定的です。良いテレビ、良い車は人々の生活に肯定的な影響を与え、人々の健康にも良い影響を与えます。韓国が世界の人々の生活に及ぼす影響は非常に肯定的であり、彼らを幸せで元気づけられいます。これは非常に尊敬すべきものであり、韓国が現在黄金時代に入ったと思います。」

◆両国の経済協力を強化すべき原発・防衛産業

今年は韓-テュルキエ自由貿易協定(FTA)発効10年目でもある。2023年に入って両国間の交易額は10年前に比べて70%ほど増加したという。

タメール大使は「両国の貿易規模が2021年基準で約80億ドル規模だったが、そのうちおよそ65億ドルは韓国の対テュルキエ輸出額であり、残りの15億ドルはテュルキエ対韓国輸出額だった。テュルキエ輸出業者は65対15という格差が大きい状況に満足していないとし、「韓国との貿易拡大を期待している」と伝えた。

韓国の立場で魅力的に思われるテュルキエの産業分野として、彼は原発と防衛産業を優先的に挙げた。

「コロナパンデミック以前から行われていた原発受注に関して、韓国とかなり円滑な協力が行われました。おそらく本格受注にはさらに3~4カ月ほど期間がかかると予想されますが、今回の原発受注は経済や政治分野で韓国との関係発展に重要な役割を果たすでしょう。今回の原発受注は、韓国とテュルキエの関係を全体的に以前とは違う水準に引き上げると思います。」

彼は関連企業に対しては明らかにしなかったが「韓国企業にとって非常に大きなプロジェクトになり、とても興味深いプロジェクト」とし「テュルキエの立場でも同じ」と期待を示した。

防衛産業と関連しては、ロシアのウクライナ侵攻後、両国で活躍し名声を博したテュルキエ製のドローンを協力対象に挙げた。

「テュルキエは武装・非武装ドローンの両方を含め、ドローン分野で世界主要国家の一つです。テュルキエのBayraktar社のTB2無人攻撃機が有名です。このドローンはウクライナ戦争やアゼルバイジャン戦争、リビア戦争とシリア内戦に投入され、その性能が検証されました。」

タメール大使は「価格も他社の同級製品対比非常に安い方であり、合同生産と技術移転も可能だ」として「現在35ヶ国でテュルキエのドローンを使用していたり注文した状態であり、最近では日本もテスト運用のために3~4台を購入した状態だ。韓国がテュルキエのドローンを購入すれば、とても良いことになりそうだ」と説明した。この他にも自動車および部品、化学工業、造船業など重工業産業分野で両国が協力できると期待した。
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