[ペ・ジョンホのコラム] リーダーシップと道徳性

[写真=ペ・ジョンホ世翰(セハン)大学教授]


大統領受難の時代だ。最近小学生の間では大統領にならないようにしようという言葉が出ているという。将来なりたい夢の1位が大統領であった過去とは全く違う風景だ。大統領になったら国民たちによって追い出されたり、部下の銃に撃たれて亡くなったり、自ら命を絶ったり、じゃないと子供たちが刑務所に入ったり自分が刑務所に行くという不幸な歴史を風刺する話だろう。そのため、帝王的大統領制に対する省察とともに指導者の道徳性問題が重要な国家的話題になっている。朴槿恵(パク・クネ)、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の拘束をめぐって進歩と保守陣営が「積弊(弊害)清算フレーム」と「政治報復フレーム」で激突しているが、国家最高指導者の道徳性問題は特定陣営だけの問題ではないはずだ。

「道徳性」と「能力」はリーダーシップを支えする二本の柱だ。この二本の柱のうちどれか一つだけでも足りなくなると、リーダーシップは維持できない。リーダーが能力がなかったり、道徳性がなければ、フォロワー、つまり構成員たちを率いることができないからだ。無能なリーダーも問題だが、道徳性が欠如されたリーダーはもっと問題だ。能力が不足したリーダーは、参謀たちの助けを得て不足することを補完することができるが、道徳性がないリーダーは、リーダーシップの正当性が根本から崩壊するためだ。

30%の支持層を持っており、50%を超える支持率で当選した朴槿恵元大統領が弾劾、罷免され、拘束収監されたことも「チェ・スンシル国政壟断事態」で道徳性が根本から崩れたためだ。李明博元大統領が拘束収監されたことも、検察捜査を通じて多くの国民が疑惑の目で眺めていた自動車部品会社「ダース」の実質所有者の問題と、これをめぐる巨額の横領や裏資金造成、脱税、収賄などの不正が明らかになり、道徳性が致命的な打撃を受けているからだ。全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)元大統領が拘束収監されて法の厳正な審判を受けたのも、故盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が不幸に生涯を終えたのも、朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が凶弾を受けて絶命したのも、李承晩(イ・スンマン)元大統領が海外に追い出され、他国で死を迎えたのも、いずれも指導者の道徳性が崩れたからであろう。

反面、優れた道徳性を見せた指導者たちは権力者の座から退いた後も、さらには生涯を終えた後も、リーダーとしての権威を堅固に維持する。その代表的な人物がマハトマ・ガンジーだ。 ガンジーは一生を道徳的指導者として暮らした。彼のリーダーシップも道徳的リーダーシップだった。ガンジーの思想は大きく3つ。真理を追求するという「サティヤーグラハ」、盗みはしないという「アスティア」、無所有を追求する「アパリグラハ」。ガンジーはこのような高い道徳的リーダーシップを発揮し、英国の殖民統治との闘争に勝利し、人種と文化と宗教が異なるインド人を一つにまとめるのに成功した。ガンジーの道徳的リーダーシップの中で最も光る部分は率先垂範である。一生勤倹節約を率先しており、労働の価値実現とインドの伝統産業である木綿の産業復興のために一生轆轤を回した人生を生きた。さらに、自ら権力まで譲歩した道徳的な生を通じてインドの様々な宗教指導者たちにまで支持を受けることができた。ガンジーの誕生日である10月2日は国連によって「国際非暴力の日」に制定され、今日まで全世界人の尊敬を受けている。

世界で最も貧しい大統領と呼ばれたホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領。五歳の時、父親を亡くして貧しい暮らしをした彼は、独裁政権の弾圧でおよそ14年も獄中生活をした。2010年、大統領就任当時、彼の全財産は1987年型フォルクスワーゲンのビートル一台が全てだったという。 ムヒカは大統領の給与の90%を慈善団体やNGOに寄付し、大統領官邸の代わりに首都郊外にある妻が所有した素朴な農場で生活するほど清貧な生活を送った。このような道徳的リーダーシップにムヒカは就任時より退任するときもっと大きな支持を受けた。大統領就任当のとき、ムヒカが受けた得票率は52%。しかし、退任する際には65%という高い支持を得た。国民を感動させた高い道徳的リーダーシップの結果だ。

大韓民国にもムヒカやガンジーのように就任した時より退任する時もっと大きな拍手を受ける大統領、死後にも星のように崇められる偉大な道徳的リーダーシップの大統領が排出されることを望むのは僕だけの望みであるだろうか?


 
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