まず、習近平国家主席が直接出向く必要があったかどうかは、今回の訪問の議題と外交的状況を考慮する必要があったと考えられる。ドナルド・トランプ米大統領と金委員長が11月のアジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議を契機に会う可能性が取り沙汰されているが、実際に北米首脳間の接触に繋がるかは不透明である。北米交渉に関して重要な合意や突破口が見込まれない状況であれば、習主席が直接出向く必要性も低いのが現実である。
また、李強総理が丹東を訪れ金正恩委員長と会った場合、信安瀾大橋の開通や貿易拡大など経済協力が訪問の核心メッセージとして浮上した可能性がある。李強総理は中国共産党の序列2位としてかなりの政治的重みを持つが、彼の職務は政府の行政と経済政策に集中している。
一方、王滬寧主席は政治的性格が強い人物である。王主席は中国共産党最高指導部で30年以上にわたり核心ポジションを歴任した理論家であり政治戦略家である。江沢民・胡錦濤・習近平に続く三つの指導部で政策とイデオロギーを扱う核心的役割を担ってきた。国務院の行政を総括する李強総理とは異なり、党の政治的方向性やイデオロギー、対外関係の戦略的意義を強調することに強みを持つ人物である。王滬寧カードを活用することで、中国は金委員長の訪問を経済協力の行事に限定せず、北中間の歴史的連帯と政治的信頼を再確認する機会として活用したと解釈できる。
実際、王滬寧と金委員長は抗米援助記念塔に献花し、抗米援助記念館を訪問した。中国の朝鮮戦争参戦を称える日程は、両国が共有する歴史と血盟関係を強調した。金委員長は中国人民志願軍の戦士たちに感謝の意を表し、今年が北中友好協力及び相互援助条約締結65周年であることも強調した。
経済協力のメッセージも欠かさなかった。王滬寧は金委員長と共に丹東の自動車工場を視察し、信安瀾大橋で金委員長を見送った。王主席はまた、信安瀾大橋の開通を契機に人的往来と経済・貿易協力を拡大する意向を示した。政治的連帯を強調しつつ、実質的な経済協力の拡大を共に模索したのである。
特に王主席は金委員長との会談で「両国が戦略的なコミュニケーションと協力を強化し、主権・安全・発展の利益を守るための平和で安定した対外環境を創出しよう」と述べた。これは単なる貿易拡大を超え、両国が外交・安全環境に関するコミュニケーションと協力を強化しようという政治的メッセージとして読み取れる。
今回の訪問は、習近平と金正恩が直接会って新たな戦略的合意を発表する首脳会談ではなかった。しかし、経済協力だけを議論する実務訪問でもなかった。王滬寧を通じて北中血盟の歴史的連続性を強調し、経済協力と戦略的コミュニケーションを共に浮き彫りにした日程であった。北中間の戦略的密着がさらに強化されている。
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