まず、経常収支が相当期間赤字が発生したためだ。国家の家計簿とも言える国際収支、その中で最も大きな比重を占めている経常収支は商品収支、サービス収支、本源所得収支、移転所得収支を含んでいる。相対的な比重を考慮してみれば、商品収支とサービス収支が経常収支の規模を決定すると見れば良い。商品収支は商品の輸出と輸入の差によって決定されるが、最近の韓国貿易現況を見れば今年の商品収支の黒字達成がそれほど容易ではなさそうだ。今年第1四半期の輸出額は1515億ドルを達成し、前年同期比マイナス12.6%減少した。輸入額は1740億ドルで前年同期比-2.2%となった。結局、今年第1四半期の輸出入額は225億ドルの赤字となった。
第2四半期を含め、その後も商品輸出入は赤字を維持したり黒字に転じても黒字幅がそれほど大きくはないと予想される。その理由は、韓国の輸出商品構造が半導体に偏っているためだ。つまり、輸出基盤がそれほど堅固ではないと評価されている。ここ数年間、韓国の輸出は半導体が主導したが、それ以外の品目では輸出増加率が2%台に留まっていた。半導体分野の輸出が国内輸出を牽引し半導体輸出は良いが、それ以外の品目の成長傾向が鈍化して韓国の輸出構造が激しく偏重されている。ここ数年間は半導体の景気好況および輸出増加で全体輸出が良い成績を収め、他の産業の輸出基盤弱化が現れなかった。しかし、最近半導体輸出が力を発揮できず、全体輸出も赤字を見せてドルの国内供給が容易ではなくなった。韓国内でドルが貴重になると、ドルに対するウォン相場は上昇するわけだ。
ウォン・ドル為替レートが高い理由の中でまた別の主要な理由は米国の政策金利引き上げのためだ。これは米国の金融政策当局である連邦準備制度理事会(Federal Reserve System)の立場から見れば、高いインフレを沈静化させるためには自然な措置だ。コロナ禍による経済危機を克服するために多様な政策的支援があったが、最も効果的だったと評価されるのは量的緩和(QE; Quantitative Easing)だった。大規模な流動性供給によって物価上昇圧力が高まり、これを緩和させるために制作金利を引き上げることは決まった手順だった。
そのため、景気が良くなれば政策金利を引き下げるのが当然だが、最近の米国経済を見れば金利が引き下げられると見にくくなった。米国経済は、成長率では理解できない。実際、米国の第1四半期の経済成長率は前期比年率1.1%を記録したが、これは市場展望値である2%の半分水準に過ぎない。このように低い成長率を記録した背景には、不動産および設備投資が予想ほどなされなかったためだ。
しかし、米国経済を支えたのは消費天国らしくも消費支出だった。価格変動性が大きい食品およびエネルギーを除いた根源個人消費支出(PCE・Personal Consumption Expenditure)価格指数が今年第1四半期に前期対比4.9%上昇した。これは昨年第4四半期の上昇率だった4.4%を超えたもので、これまで広がっていた物価下落予想を反騰させたものだった。この他にも米国の新規失業手当請求件数が減るなど、米国の雇用市場は良好だと評価されている。FRBが政策金利を決定する際、最も重要だと見ている成長率や消費および雇用が依然として良好な流れを見せ、市場では今後政策金利が引き続き引き上げられるだろうと予想している。
結局、米国の政策金利は今のように高い水準で維持されるものと予想され、韓国経済を支える輸出活力が以前と同じではなく、韓国内のドル供給余力が低くなっている現状況は当分続くと予想される。以前とは異なり経済危機水準で見られるウォン・ドル為替レートをどのように理解すれば良いのかという疑問からコラムを書き始めたが、特に解決策があるとは思えない。 為替レートが高ければ、小市民は海外旅行の日程を減らす水準に変えなければならない。しかし、国家レベルではもう少し体系的でビジョンのある対応戦略が用意されなければならないだろう。
ひとまず、為替レートの変動性をもたらす要因に対するモニタリングが必要だろう。そして、市場参加者の心理が一方に偏らないようにするために政策当局者と市場参加者の疎通がうまく行われなければならない。何より重要なことは、輸出に大きく依存する韓国経済の特性を考慮し、品目や輸出市場への偏りを緩和する長期的な体質改善戦略を講じるべきである。未来成長指向の産業および地域に対する投資が必要なだけでなく、そのための人材補充にも汎政府的な政策が用意されなければならないだろう。
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