トランプに安倍まで・・・「自由貿易の尖兵」WTO存立の危機

  • トランプ・安倍の反貿易攻勢に「改革」も未知数

  • WTO機能麻痺の兆しに貿易報復のドミノ懸念

[写真=GettyimagesBank]


「我々の製品を作り、我々の企業から盗み、我々の職を破壊する外国の侵害から、この国の国境を守らなくてはならない。保護(主義)によって、繁栄と力は拡大する」

ドナルド・トランプ米大統領が2017年1月20日、就任演説で述べた言葉だ。大統領選のスローガンである「米国を再び偉大に」を実現するために、保護主義を図るという宣言だった。トランプの2020年再選挑戦スローガンは「米国を偉大なままに」だ。保護主義を引き続けて推し進めるという誓いである。

トランプ大統領は言葉の通り保護主義のための行動にも躊躇しなかった。就任するやいなや環太平洋経済連携協定(TPP)から脱退したのが代表的だ。彼に自由貿易協定(FTA)は、米国の「災害」だった。韓国はもちろん、カナダ・メキシコと結んだFTAを改め、日本などを相手に2国間の貿易交渉を強要している理由だ。トランプ大統領はついに中国を相手に貿易戦争を繰り広げ、自国に有利な貿易協定を要求している。

このようなトランプが世界貿易機関(WTO)を放っておくわけがない。WTOは世界最高の貿易裁判所として多国間自由貿易秩序の尖兵の役割を果たしてきた。トランプ大統領は、米国に不公正なWTOから脱退する可能性があると脅したまま、WTO上訴機関委員(裁判官)の指名にブレーキをかけた。

上訴機構はWTOに提訴された紛争事件を第1次に審理し、判決するパネル事案に対する上訴を担当する。世界貿易の「大法院(最高裁)」といえる。全7人で構成され、少なくとも3人がいれば決定を下すことができる。現在4人空席であり、2人は来る12月10日に任期が終わる。この時までトランプが意地を張ると上訴機構は1人体制で機能を失うことになる。WTOの紛争解決手続がすべて麻痺されるわけだ。ロベルト・アゼベド世界貿易機関(WTO)事務局長は、連鎖的な貿易報復事態が続くだろうと警告した。

最近WTO韓日水産物紛争も上訴機構の審理で韓国が勝訴した。WTO上訴機関の問題は23〜24日(現地時間)、WTO一般理事会に案件として上程される日本の対韓国輸出規制事態とも無関係ではない。

ブルームバーグとロイターなど海外メディアは、WTOが設立以来、最大の危機に直面したと診断した。トランプの脅威とともに各国の利害関係が反映された断片的な改革の要求などが相次ぎ、WTOが存立の危機に瀕しているということだ。

WTOは最近再び激しくなった保護主義と電子商取引をはじめとする貿易形態の変化、技術発展などによる改革を求められている。問題は、各国の要求をすべて満たす改革案を設けるのが容易ではないという点だ。 WTOの産婆の役割をした米国が背を向けながら求心点も失った状態だ。

ブルームバーグはWTOが発足以来、初の合意文である「バリ・パッケージ」を導出するのに20年がかかったとし、164の加盟国が新しい合意を成し遂げる可能性は少ないと観測した。WTOの初の包括合意であるバリ・パッケージは2013年12月、かろうじてすべての加盟国の同意を求めることができた。WTOが発足した1995年以来、18年ぶりのことだ。これさえも貿易円滑化など敏感性に欠ける懸案に対する合意だけを盛り込んだ「スモール・ディール」だった。

第二次世界大戦以降、自由貿易は世界経済の強力な成長エンジンの役割をした。米国が主導した「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」体制と、これを継承したWTO体制が自由貿易秩序を支えた。米国は自由貿易を推進する強力な動機があった。圧倒的な競争力だ。自由貿易は競争力が強い国と弱い国の格差を拡大したが、世界経済の成長率を高め、利益を分配することで格差拡大に対する不満を和らげた。

問題は、後発走者たちの競争力が高まり、米国の自由貿易の動機が弱まったことだ。その間、米国は莫大な貿易赤字を抱え、WTO内で中国をはじめとする新興国の声が大きくなったことに対する反感を持つようになった。今は中国がむしろ自由貿易の守護者を自任するほどだ。

同じ脈絡で専門家たちは日本の安倍晋三政権の対韓国輸出規制措置を批判する。自由貿易の枠組みの中で成長した日本が、トランプの反貿易攻勢を真似してはいけないのではないかということだ。ただでさえ安倍首相はこれまで国際社会で自由貿易を擁護し、自国に対するトランプの反貿易攻勢を警戒している。
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