[写真・執筆＝ユン・ウォンソク淑明女子大学特任教授・グローバル産業競争力フォーラム会長]
問題は、その趨勢だ。昨年、海外直接投資送金額は497億8000万ドルで、前年比11.6％増加した。一方、外国人の国内直接投資は144億8000万ドルで、34億3000万ウォン（19.1％）減少した。昨年度の純投資流出は353億ドルに達した。これまでの投資部分の純流出は、貿易収支の黒字を規範にした経常収支黒字で補完してきたが、それさえも今年に入って輸出が持続的な減少を見せ、第1四半期に6年9ヶ月ぶりの低水準である112億5000万ドルにとどまった。さらに、5月の輸出も9.4％減少し、貿易収支の黒字幅は22億7000万ドルにとどまり、今後の見通しもそれほど明るくない。
業種別の海外直接投資をみると、昨年の場合、製造業の割合が32.9％で1位を占め、地域別ではアジアが34.1％で1位を占めた。今年第1四半期には製造業の海外投資が前年同期比1.4倍の増加して41％に比重が拡大された。このうち米国への投資は41億7000万ドルで、トランプ大統領の保護貿易拡大によって中国などで迂回してきた生産基地を完全に米国に移したり、米国市場確保のための買収・合併（M＆A）など投資進出が拡大されたものと分析されるが、問題は製造業のエクソダスによって国内産業の空洞化が加速しているという憂慮だ。
さらに、今年に入って外国人直接投資の減少と併せて、第1四半期の国内設備投資も前年同期より17.4％減少した。つまり、輸出と投資の両方が大幅に減少しており、内需も回復する兆しがない。雇用を創出する内需 - 投資 - 輸出という三頭馬車が同時に力を失っている。それこそタイミングを逃したら復活ができないという危機感も広がっている。
対外的には、米中覇権戦争で並びまで強要される困難な局面だ。最近、大韓商工会が500社を対象に実施した「韓国企業の未来準備実態調査」の結果によると、国内よりも海外が投資しやすいと答えた企業が2倍以上多いことが分かった。このような理由としては、人件費などコストが低い（39.4％）、経済活力が高（32.7％）、企業活動にインセンティブが多い（13.35）、規制強度が低い（11.5％）などを挙げたという。すでに政府もこうした問題の深刻さを認識し、経済に活力を入れるために補正予算などの拡張財政、政策金利の引き下げを通じた通貨緩和、輸出活力向上対策の支援拡大、内需強化のためのサービス産業の活性化、最低賃金の引き上げ速度調節、労働・環境など規制緩和、研究・開発（R＆D）の拡大、スタートアップ育成など数多くの対策を打ち出していたり検討している。さらに、経済を総括する青瓦台（大統領府）の人事も断行した。今からでも政策の優先順位を決め、短期的に財政政策の効果が表れる分野に選択と集中しなければならならない。また、同時に中長期的な観点から韓国経済が進む方向も綿密に連携し、未来へのリスクも備えなければならない。
しかし、このような経済政策は、現在の危機状況を克服するための必要条件に過ぎないということだ。幸い今の危機を克服したとしても、韓国経済の持続的な繁栄のためには、より根本的な解決策が必要だ。よって筆者が考える十分条件は、様々な利害関係者を調整し、社会の葛藤を解消できるリーダーシップと、それを支えられる国家レベルの「社会的資本（Social Capital）」の蓄積だ。米国の碩学であるフランシス・フクヤマ氏は、彼の著書である「トラスト」で「社会構成員間の信頼が経済発展を導く」とした。つまり、社会の構成員が互いに信じて高信頼文化の社会であれば経済的に繁栄し、構成員らが相手を不信する低信頼文化の社会は、経済的な繁栄が難しいということだ。また、社会またはその特定部分で信頼が定着されたとき、社会的資本が生じるため、より根本的な処方が必要である。したがって、今の所得主導成長・革新成長・包容的成長・公正経済という様々な経済政策が根を下ろして支持を受けるかどうかは、政策の一貫性はもちろん、韓国に深く根づいている社会的徳目と信頼水準によって決定されるだろう。社会的不信が蔓延すればするほど、社会的、ひいては経済的取引費用は増大し、共同の利益を実現する機会はますます減るだろう。
すでに韓国は経済的にも政治的にも世界で成功した国として認められている。これは短期的な成果がでなく、韓国人だけが持つ独特なDNAと韓国社会に内在された社会資本が融合して長い期間作り上げた業績だ。そのため、今の私たちも先輩たちが築いてきた伝統や規範、私たちだけの価値を基盤にした一段階高い信頼文化の社会をつくらなければならない。経済は経済だけでは解決できない。政府-企業-労働者-国民がみんな力を合わせなければならない。繁栄する国家へと進むか、貧しい国へと墜落するかは私たちの選択にかかっている。
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