[ユ・ジョンジュのコラム] ポストコロナ、機会に変えるべき

  • 執筆=韓国経済研究院のユ・ジョンジュ企業革新チーム長

[写真=亜洲経済(韓国経済研究院のユ・ジョンジュ企業革新チーム長)]


私たちにあまりにもよく知られている経済学史上最大の古典「国富論」でアダム・スミスは、分業の重要性を強調した。一人の労働者がピンを生産すれば、1日に20個も作るのが難しいが、10人の労働者が18個に上るピン生産工程を適当に分けて担当すれば、1日に4万8000個あまりを生産できるということだ。国富論以降、世界は原材料と部品調達、製品の設計・生産・流通・販売を各国が分担する「グローバルバリューチェーン(Global Value Chain)」を形成するに至った。今、我々は一つの国家が一人の労働者のように行動する「ピン工場の拡張版」である世界で生きているわけだ。

ところが、予想しなかった新型コロナウイルスの拡散で、グローバルバリューチェーンに亀裂が生じた。未曾有の災難の前で各国は門戸を閉め、世界貿易機関(WTO)は今年の世界貿易規模が昨年より13~32%減る可能性があると発表した。前四半期に韓国は前年同期比マイナス1.4%という低調な成長率を記録したが、これは主に民間消費の減少によるもので、グローバル需要減少による輸出減少はまだ本格的に反映されていない。

グローバルバリューチェーンが揺れるのを目撃した世界は、大きく2つの対応策を模索している。一つは「グローバル生産網の多角化」だ。全世界の製造業の最終生産品に対して中国の付加価値が寄与した割合は、2005年の7.4%から2015年には19.1%に拡大した。これまでグローバルバリューチェーンが「コスト削減」の次元で形成されてきた結果、中国が世界の工場になったのだ。しかし、新型コロナ事態以後、バリューチェーン形成で「危機管理」が新しいキーワードに浮上した。中国の工場が止まると、空がきれいになった光景を見て、多くの人が中国中心のバリューチェーンについて疑問を抱くようになり、今後、効率性よりは安定性が重視される方向に供給網の再編と分散化が行われるだろう。

もう一つはすでに海外に進出している企業を自国に回帰させる「リショアリング政策」の拡大だ。米国はすでにトランプ政権発足後、自国中心主義の基調の下、法人税の引き下げや規制撤廃などのリショアリング政策に拍車をかけている。米国企業のUターン促進機関である「リショアリング・イニシアティブ(Reshoring Initiative)」によると、2010年に95社に過ぎなかったUターン企業数は2018年に886社を記録しており、特にトランプ政権初年度の2017年からその数が急増した。米国だけでなく、日本(ソサエティー5.0)、ドイツ(インダストリー4.0)など主要国は自国の製造業復活に向けて積極的に取り組んでいる。これまでリショアリング政策は、自国内の雇用創出を主な目標として進めてきたが、新型コロナの拡大により「供給網の多角化」と「生産リスクの減少」という新たな目標が加えられただけに、自国への企業誘致競争は今後、さらに加速するものと見られる。

この二つの現象は私たちにとって機会になり得る。中国から離脱したり、中国以外の追加供給網を探す企業を韓国に誘致できる機会であると同時に、海外に出ている韓国企業が国内に投資・雇用するように誘導するきっかけになるからだ。新型コロナは確かに私たちに試練を抱かせたが、今韓国の投資魅力を画期的に高めるとしたら、ポストコロナ時代には新しく再編されたグローバルバリューチェーンで韓国が重要な地位を占めることができるだろう。

全世界の企業を韓国に引き込むためには当然のことだが、韓国での企業活動が他の国での活動よりも大きな満足をもたらさなければならない。私たちは自ら韓国が「企業しやすい国」と言えるだろうか? 最低賃金の急激な引き上げ、週52時間制の導入、法人税率の引き上げなど、ここ数年間、企業環境の改善とは程遠い労働・租税政策が実施され、国民年金を活用した企業経営干渉の試み、商法施行令と特経法の改正など、企業・企業家の身動きの幅を狭める規制も行われた。加えて、遠隔医療の禁止、タダ(TADA)禁止法の成立、インターネット銀行法の否決など、新しい市場を創出できる機会も阻まれている状況だ。2019年の世界経済フォーラム(WEF)の国家競争力評価で、韓国の総合順位は前年比2ランク上がったが(15位→13位)、相対的に順位の低い労働市場部門(48位→51位)と企業活力部門(22位→25位)の順位はむしろ3ランクずつ下がった。企業誘致と関連して懸念される部分だ。

「ポストコロナ」時代に韓国が「ファーストコリア」になるためには、今回の機会に景気に負担を与える政策を正す一方、規制を緩和して新しい市場を開放しなければならない。コロナが退いた後、グローバルバリューチェーンはどのような形であれ、復元されるだろう。新しいバリューチェーンの下で韓国がグローバルハブとして生まれ変わることを期待する。
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