[カン・ヨンジンのコラム] 綱渡りの達人は飛び降りるタイミングを知っている

[写真=新華通信社 / 執筆=カン・ヨンジン招聘論説委員]


中国が怒りを鎮めた。先週、康京和(カン・ギョンファ)外交長官が明らかにした「3不政策」を機に、韓・中間の「サード葛藤」が解除されたという評価がすでにあった。これを文在寅(ムン・ジェイン)大統領と習近平中国国家主席が週末の首脳会談で確認した。来月には文大統領が中国を訪問し、習主席は来年2月の平昌(ピョンチャン)五輪の時、韓国を訪韓する意思があると明らかにした。中断された最高位級の交流を再開することにしたのだ。

中国がサードを理由に韓国に加えた経済的「制裁措置」も先週から解除される様子だ。文在寅と習近平会談を契機に中国人は安心して韓国観光ができ、韓国化粧品も好きなだけ買うことができるようになった。今週予定された文在寅大統領と李克強(リー・クーチアン)中国首相会談では「韓流解除」を超えての韓・中経済交流を強化する案が本格的に議論される見通しだ。

幸いなことだ。「3不政策」が中国に対してあまりにも低姿勢であり、韓国の安保主権を放棄したという否定的評価がある。それにもかかわらず、我々の最大交易国の中国との関係を冷ややかな対立的状況の下で放置してはいけないことだ。どうにか解決しなければならないことだった。「3不政策」は安保を放棄したことまではなく、一部を譲歩した水準と評価することが公平に見える。

「安保問題は決して妥協してはならない」という原則論はアピール力が大きい。しかし、原則論を超えた高次元的な戦略戦術がなくては韓半島周辺情勢を乗り越えることができない。北朝鮮が相変わらず「米国の敵視政策が変わらなければ、核放棄はない」と言うのが安保第一主義の典型だ。極端に人権侵害的な北朝鮮体制ならば「安保第一主義」以外に他の選択が不可能かも知れない。しかし、それによって北朝鮮が当面の危機は、北朝鮮の存立を根本から揺るがしている。安保第一主義が安保を最も脅威する逆説的状況だ。

安保第一主義まではなくても安保は対外政策において最優先順位で扱わなければならないのは確かである。問題は我々の安保関連の事案で中国にどの点まで譲歩できるのかということだ。 中国と米国は基本的に競争的な関係だ。日本が中国を恐れて牽制するのは数百年間持続された立場だ。中国が北朝鮮を捨てて韓国が吸収統一するように放置するのは期待し難い。このような点をすべて考慮しながら、我々の安保を最善で守らなければならないのが韓国の課題だ。

韓・中首脳会談で北朝鮮核問題の解決策について意見交換があったという。しかし、青瓦台(大統領府)は内容を公開したくなかった。北朝鮮の核開発中止と韓・米軍事演習の中止を交換するという中国の双中断(北朝鮮の核・ミサイル開発と韓米大規模軍事演習中断)立場に対して米国は「侮辱的」とし反対している。公式的に政府の立場も変わらない。ところが文大統領が習近平主席の前でどんな立場を見せたかが注目される。断固たる反対だったのか、それとも考えてみることができるとしたのか、なければ無言だったのか。これと関連して文正仁(ムン・ジョンイン)大統領特別補佐官は中国の双中断立場にかなり同調する立場だ。文大統領が習主席の前で文特別補佐官のように反応したのだろうか。

韓米は1992年合同軍事演習を中止したことがある。南北基本合意書が締結されるなど和解の雰囲気が高まった時だ。しかし、今は当時とはあまりにも違う状況だ。当時、北朝鮮は共産圏国家の連鎖崩壊の中に深刻な経済難を経験していた。これに比べて今の北朝鮮は核開発の最後の段階にある。韓国の安保環境が韓米軍事演習の中止を考慮するほど余裕がある状況ではない。

中国がこれを知らないはずがない。それでも双中断を強調するのは韓・米同盟を毀損しようとする意図があるためだろう。サードを理由に韓国に大きな打撃を与えてまで経済制裁に乗り出したのも同じだ。中国と接している韓半島は米国の軍事前進基地になることを我慢できないということだ。今後も中国は韓米同盟の弱体化を狙った策略をいつでも駆使するだろう。

鄧小平時代の韜光養晦(韬光养晦)が習近平時期には新型大国関係に変わった。実力が揃うまで時を待つという対外政策が米国に対して中国も大国であることを認めるよう要求する状況だ。 中国は我々にも中国を大国に仕えることを強要している。

先週トランプ米大統領は韓国で1泊2日間、安保の歩みを続けた。到着するやいなや、キャンプ・ハンフリーズ(在韓米軍基地)を訪問し、国会演説も安保がテーマだった。霧のせいで不発に終わったものの、予定になかった板門店(パンムンジョム)訪問も劇的な安保の歩みだった。しかし、トランプの行動は歴代米大統領とは微妙に違っていた。韓国に対する安保公約再確認過程が省略された。

米国は今韓国の対中国の立場がどう変わるのかを綿密に注視している。最近、韓国が米・中間の間で綱渡りをする姿を見ながら、米国の立場も変化している最中だ。「同盟」である米国が中国のように私たちを揺るがしてはいなくても、同盟は相互的にならざるを得ない。私たちが同盟をおろそかにしていると感じる場合、米国も残念な気持ちを表すことになるだろう。

「反米で何が悪い?」という盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代がそうだった。当時、ドナルド・ラムズフェルド米国防長官は"望まない国に米軍を駐留するつもりがない"と言い返した。このような米国をなだめるため、盧武鉉政府は在韓米軍の役割を韓国防衛を超え、米国の海外機動軍の役割まで拡大することに同意するしかなかった。ミイラ取とりがミイラになった結果だった。在韓米軍が平澤(ピョンテク)米軍基地に集結するようになった背景がまさにそれだ。

しかし、平沢基地はアイロニーだ。世界最大規模の海外米軍基地になったおかげで、米国の立場からは在韓米軍の戦略的価値がむしろ大きくなり、同盟はそれだけ強化されたわけだ。

私たちは現在、米国と中国の間で運命的な綱渡りをしている。以前にはなかったことだ。だから危なげな様子だ。サード報復で見たように中国はいつでも綱を大きく揺るがす態勢だ。韓・米同盟が後押ししている北東アジア秩序を破ろうとしている。今は私たちが綱から飛びおりることができる状況ではない。しかし、綱の上でいつでも飛びおりることができるという覚悟と準備が必要かもしれない。綱の上に立っている韓国を揺さぶることができるのは私たちが綱の上にいるときだけであることを皆が分かるようにしなければならない。
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