[チュ・ジェウのコラム] 米中の報復関税競争と貿易戦争

  • 関税競争、貿易戦争は起こるだろうか・・・1930年代の世界恐慌の可能性は低い

[写真 / 執筆=チュ・ジェウ慶熙(キョンヒ)大学中国語学科教授]


最近、米国と中国間の報復関税措置の発表が連日報道されている。品目と関税引き上げ率は空前絶後の規模だった。そのため、世界は報復関税の過度な競争が貿易戦争につながるか、世界経済に災いをもたらすかに神経を尖らせている。

多くの専門家が現在の状況を1930年代の大恐慌当時と比較する。特に最近、米国の関税引き上げ率の決定の含意を過去、米国の代表的な報復関税法案である「スムート・ホーリー法(Smoot-Hawley Act)」の結果から探している。

国家間の関税戦争を貿易戦争だと言えるだろうか。関税と貿易戦争はどのような関係なのか。一方的な関税引き上げに、対象国が相応する措置で対応し、また、これに対して再び報復する悪循環はいつまで続くことができるだろうか。このような悪循環の最後が貿易戦争であるだろうか。

貿易戦争は一方的な制裁と禁輸措置の2段階に分けて行われる。制裁段階は、関税率の関税率の調整と市場進入程度、または開放もいわゆる「クォーター」の調整を通じて行われる。最大の兵器は非関税障壁の強化だ。

禁輸段階は一つの国が一方的に対象国の製品の輸出入を全面禁止することだ。つまり、貿易障壁を要塞化することだ。この場合、禁輸措置を受けた国家が選択できる唯一の方法は密輸だ。

しかし、相互依存度が高く、グローバル化が深化された今日には、完璧な禁輸措置はない。1990年代のイラン産原油に対する禁輸措置がその証拠だ。当時、原油の禁輸措置は世界経済に莫大な打撃を与えたが、生産量と輸出のクォーター(割当量)を制限させる程度で止まった。

報復関税の競争は貿易戦争ではない。関税競争は関税引き上げの攻防戦で、螺旋形の効果のように引き続き上昇する姿を見せる。上げ幅はもちろん、上昇限度も無制限だ。

冷戦時期以降、米中両国間の関税戦争は珍しく、長く持続されることもなかった。代表的な事例が1980年代初頭と2000年代初めだ。当時、米国はますます大きくなる対中国の貿易赤字を縮小するために関税引き上げとクォーター設定を表明し、中国に市場開放の拡大を要求した。

しかし、二つの事例は1年以上続かなかった。中国が予想外の報復措置で対抗したためだ。中国は当時、世界貿易機関(WTO)の前身組織である「関税と貿易に関する一般協定(GATT)」の加盟国ではなかったし、それで米国の予想を超える関税率とクォーターに対抗することができた。そして、米国との妥協に成功した。

20世紀最後の螺旋形の関税引き上げ競争は1930年代に起こった。米国は「スムート・ホーリー法」を1930年に通過させ、輸入関税を20%以上ずつ高めており、これによって平均輸入関税率は50%を超えた。1929年、米国の平均関税率は40.1%だったが、1932年に59.1%まで上がった。

しかし、米国は1866年と1922年にも36%以上の高関税政策を策定したことがある。当時、米国の平均輸入関税率が25~30%だったという事実を考慮すると、引き上げ幅が高すぎると見ることはできなかった。今日、米国が中国製品に適用した引き上げ幅(約10~15%)と変わらない。

それにもかかわらず、今日の状況が1930年代のような貿易戦争に飛び火する可能性が低い理由は一つだ。米国の高関税対象の品目が選別的に米国の輸出入市場と国民総生産(GNP)を萎縮させないはずだからだ。

1933年には保護貿易措置で米国輸入規模は1929年比66%、輸出は61%大幅に減少した。大恐慌が始まり、GNPも1929年の1030億ドルから1933年には556億ドルに、ほぼ半分に減った。失業率は天井知らずに上昇した。

このように関税引き上げが貿易はもちろんGNPなど、国家経済の全般に悪影響を与えてこそ、ようやく貿易戦争が勃発することができる。

また、注目すべき事実は1929年、米国GNPで輸入と輸出が占める割合がそれぞれ4.2%と4%に過ぎなかったことだ。保護貿易措置による貿易戦争が大恐慌の原因と断定するのは無理という意味だ。第一次世界大戦後に始まったグローバル景気悪化が大恐慌の最も根本的な原因だった。大恐慌によって発生したのが保護貿易措置と貿易戦争だった。

今日の世界経済は貿易戦争によって1930年代の大恐慌のような打撃を受けにくい構造だ。一応、世界経済は好況を享受している。貿易も大恐慌当時に比べて、国内総生産(GDP)で占める割合が高く、相互依存の構造が有効である。つまり、関税引き上げで被害を受ける製品が他の市場を探すことができるという意味だ。

また、世界貿易機関(WTO)が存在する。不公正で排他的、差別的な関税措置に対する交渉の場と、仲介機構が存在するという事実は過去1930年代と異なる構造的特徴だ。

もちろん、貿易戦争の可能性が少ないといって、米中関税戦争に安易な対応をすると意味ではない。問題が解決されるまで自由貿易協定(FTA)を積極的に活用するなどの対応が必要である。

 
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