太刀川正樹‐日刊現代記者‐亜洲経済編集委員 | ||
鳩山首相が「沖縄普天間基地移設問題」と「政治とカネ」の問題で小沢幹事長と一緒に辞任したことに関して国民が民主党に対して再び期待感を示した結果だと思う。
管直人は歴代の首相とは全く違って世襲議員ではない。小泉、福田、安部、麻生、そして民主の鳩山は全て父親などが政治家ファミリーだった。
しかし管首相は市民運動出身で叩き上げの人物だ。私自身も彼が市民運動を手伝っていた頃から面識がある。今日本のマスコミが注目しているのが管直人夫人の伸子さんだ。彼女は年上女房で、管直人も奥さんには頭が上らない存在だ。「私を説得できなければ日本の有権者を説得できないわよ」「私を説得できなければあんたは落選するのよ」と夫を叱咤激励している。
私も銀座のスナックで幾度が一緒に飲んだことがある。どこかの会合の帰りなのか、一人でぽつんとやってきて、カウンター席でウイスキーを飲んでいた。最後に飲んだのは二年前のことで、何を話したのかは記憶がないが、「ざっくばらんで面白い酔っ払いのおばさん」という印象だった。
そのスナックは管直人も時々顔を見せる場所で夫婦で同じところで別々に飲んでいるのだ。彼が東京吉祥寺が地元で、地元のお祭りにはよく顔を出すし、よく地元の居酒屋でも飲んでいる。
私と管新首相の年齢がほぼ同じということもあり、昔の市民運動でも顔をあわせたこともあって、新首相になったことを率直に喜んでいる。
しかし彼が抱えている問題はいろいろある。一つは民主党内部で鳩山元首相より影響力をもっているといわれる小沢元幹事長の存在だ。今日発表された内閣名簿や民主党幹部の顔ぶれを見ると、「反小沢」「非小沢」の人物で固めていることがわかる。
かつて小泉首相が就任したときに「(古い)自民党をぶっ壊す」というキャッチフレーズを叫んで、選挙で圧勝した。これと同じように管首相が「(古い)民主党」つまり「小沢色」を払拭して「民主党再生に賭けている」のではないかと思う。
日韓関係に関しても旧自民党時代のように韓国を軽視したりすること全くありえない。彼は鳩山首相が挫折した「沖縄普天間基地移設問題」に関してももう一度再点検したいと考えているはずだ。勿論日米合意した点についてはすぐに反故することはできないが、戦前戦後から現在に至るまで日本のために犠牲になってきた沖縄や県民の怒りをこのまま放置していくことはないだろう。
今朝のテレビ報道によると、「管新首相はいま琉球処分に関する本を読んでいる」という。「琉球処分」とは日本が沖縄を差別してきた歴史である。数百年前からその歴史は遡る。最近では第二次世界大戦末期に日本軍部が沖縄県民を犠牲にしたという悲しい歴史があり、多くの民間人が日本軍部のために殺されたという事実もある。そして戦後は日本の本土のために沖縄が全土の70%以上を米軍のために差し出しているという歴史だ。
鳩山首相は沖縄県民の気持ちを無視した。管新首相がその教訓を学び、新しい態度で沖縄に対するならば、歴史的に評価される首相になることもできるだろう。いずれにしろ、管新首相の誕生で、支持率は急上昇した。
皮肉にも対民主党攻撃を続けてきた自民党サイドは攻撃相手の鳩山も小沢もいなくなってしまったので、皮肉にも支持率は再び下がってきた。今年は日韓併合100年をむかえる。こうした歴史的な教訓を学ぶためにもいいタイミングで管直人が首相になってくれたと思う。自民党だったら保守的な論客を重用して、歴史的な隠蔽工作をしないともかぎらないからだ。
太刀川正樹‐日刊現代記者‐亜洲経済編集委員 mike@tkk.att.ne.jp